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2006/10/03 「金正日を震え上がらせた男」

北朝鮮が3日、核実験の実施方針を表明。「止めてほしければ何かよこせ」と言わんばかりの恫喝、逆ギレ外交をマトモに相手にしていてはこちらの身がもたない。そんなに実験やりたければ、どうぞ自分の国に穴掘って爆発させてください、北朝鮮科学技術の水準からすれば、起爆しないということも十分考えられるだろう。などと考えたが、ネットで少々調べると、臨界核爆発実験こそ行っていないものの、北朝鮮はすでに起爆装置の実験を、100回以上行っているのだとか。これは知らなかった。

以前、「全核兵器消滅計画」で読んだところによると、核爆弾の実用化は結構難しく、単にプルトニウムが臨界量に達するだけでなく、プルトニウムを囲んだ高性能爆薬を次々に点火する「爆縮」等の技術の確立が実用化には不可欠なのだそうである。起爆実験をそんなにやってるとしたら、もうそのへんの技術もすでに実証済みなのだろうか。だとすると北の恫喝は、「瀬戸際外交」のブラフではなく、実に不気味に響いてくるのだが。

核実験表明の背景には、米国の金融制裁が金正日政権の中枢部に深刻な打撃を与えており、体制崩壊にもつながりかねないとの危機感があると解説されている。

そういえば、先月の文藝春秋に「金正日を震え上がらせた男」という記事があった。前国務省東アジア太平洋局上級顧問デビッド・アッシャーが、アメリカの対北朝鮮経済制裁を語るもの。

覚せい剤輸出、偽タバコや偽ドルの輸出など、国家規模で犯罪を続ける北朝鮮に対する規制を発動するため、米財務省は、まずマカオの銀行、BDAがマネーロンダリングにかかわっているとして強硬に取引中止を求めた。この預金封鎖額は2000万ドルと国家がからむマネーロンダリング事件としては実に小額。しかし、これが一罰百戒となり、世界各国の金融機関が次々と北朝鮮との取引を中止。今では、マネーロンダリングに関与しているとみられるのは、昔なじみの中国とロシア系一部の金融機関だけ。このアメリカの制裁は、北朝鮮、特にそのエリート層の暮らしに大打撃を与えているのだという。

アメリカの金融制裁が、北朝鮮に深刻な影響を与えているのはよいことだと思えるが、問題は、今後この国と付き合う上での展望だ。本来ならば北朝鮮の体制が内部崩壊を起してくれれば、実に喜ばしいことであるが、果たしてそんな風に行くものだろうか。

キム・イルソンは、第二次大戦直後にソ連の傀儡として北朝鮮に凱旋帰国してから、死去するまでに絶対権力を掌握し続けたある種の政治的天才だが、その息子キム・ジョンイルにしても、(その権力承継過程は明らかになっていないものの)何の苦労もなく世襲で権力を譲り受けた「金持ちのボンボン、バカ息子」ではなかろう。それなりの権謀術数で後継の座を着実に固めており、絶対権力の世襲を受けてからは、自らに逆らう可能性のある勢力について、徹底的に排除し、確固たる権力基盤を確立していると見るのが妥当ではないだろうか。

キム・ジョンイルがまだ絶対権力を掌握し続けるとしたら、我々は今後も、「ミサイルに核弾頭を積むぞ」、「今度は発射するぞ」、とエスカレートする脅しにずっと付き合って行かなければならない。まあ、よりによってなんでこんな厄介なのが隣人にいるのだろうかと嘆息せざるを得ないのだが、国を引越す訳にもゆかない。実に困ったもんである。