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2006/01/16 「クローンES細胞論文偽造」

「ニューズウィーク日本版」で韓国ソウル大、黄教授のクローンES細胞論文偽造の記事を読んだ。ノーベル賞への国民的期待からくるプレッシャー、功名心、歪んだプライド、年長者には逆らえない儒教的体質。黄教授が偽造に走り、それになぜ歯止めがかからなかったか、原因はあれこれ推測できる訳だが、韓国の科学界全体への信頼が失われかねない大スキャンダル。もっともソウル大学の調査とその発表は迅速であり、一定の自浄作用があることは示した。

本日の日経には、滋賀医大などがサルのクローンES細胞研究を再開するとの報道。ヒト・クローンES細胞が成功して、いまさらサルでもあるまい、と中断したらしいが、肝心のそのヒト・クローンES細胞がペテンであったと判明して仕切り直し。論文偽造が科学の進歩に与えた悪影響は大きい。

ES細胞については、「クリストファー・リーヴの夢、再び」にも書いたが、その研究の是非について、アメリカではずいぶん前から話題になっており、前回の大統領選挙ディベートでも政策の違いとして取り上げられた話題。

ES細胞は、身体のどんな組織細胞にも分化できる能力を持った細胞だが、ヒト・クローン胚から作成できれば、免疫拒否反応のない人体再生医療を可能にする。しかし、同時に、クローン人間に結びつく以外に、作成過程においてヒト受精卵を破壊する等、生命倫理上の問題もあり、アメリカでは特にキリスト教右派の反発が強く、研究には連邦予算がつかないことになっている。

クローン人間そのものを作っても人類の幸福には何も役立たないが、ヒト・クローンES細胞が再生医療に応用できたなら、神経損傷の修復を可能にし、脊髄損傷で車椅子の人が歩ける日がいずれやってくるかもしれない。もっとも現段階では、ヒト・クローンでないES細胞でも、それがどんな組織細胞に分化してゆくかコントロール不能なのだという。再生医療への応用には、宗教や倫理問題を別にしても、まだまだ迂遠な道が横たわっているようだ。体細胞クローンES細胞から肝臓が再生できたら、酒飲みには朗報なんだがなあ。肝臓が悪くなったらスペアに交換。<オイ。