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2004/10/12 クリストファー・リーヴの夢、再び。

往年のスーパーマン俳優、クリストファー・リーヴ死去のニュース。まだ52歳。リーヴが乗馬中の事故で脊髄を損傷する大怪我をしたのは95年。スーパーマンが手足を動かせず、呼吸さえ人工呼吸器の世話になるような肉体の牢獄に閉じ込められたという運命の皮肉。当時のアメリカのメディアが大きく報道したのを覚えている。AP電は、死因を床ずれからの感染合併症と伝えた。

彼自身は車椅子に縛り付けられていたが、神経損傷の修復研究に希望を抱き、自分は必ず再び歩くと宣言していた。これは4年前のスーパーボウルのCMで題材として取り上げられ、全米の話題となった。その時の感想は、過去日記に、「クリストファー・リーヴの夢」として取り上げたことがある。

リーヴが神経修復に役立つと期待をかけていた研究のひとつが「Stem Sell」。先週の大統領選挙ディベートでも、この「Stem Sell」研究に対する規制が論点となった。ケリー候補がブッシュ政権の規制を批判し、リーヴの名前を引き合いに出して、「I want him to walk again」と述べたのだ。

Stem Sellとは、胚性幹細胞(ES細胞:Embryonic Stem Cells)のこと。損傷を負った神経や臓器の修復を行う再生医療に有効であるとされるが、この細胞の抽出にはヒトの受精した胚が必要。これがヒト・クローンに結びつくとして、共和党はキリスト教右派との関係からこの研究を規制。

共和党元大統領ロナルド・レーガンの息子が、父親のアルツハイマーにも有効かもしれないと、Stem Cell研究推進をライバルの民主党大会に出席して訴えた事も今回の大統領選からみで以前、大きな話題になった。クリストファー・リーヴの今回の死去は、この「Stem Sell」問題を、また大統領選の争点のひとつに押し上げる効果があるかもしれない。

科学と倫理についてはいまだに論争が続く。そして、クリストファー・リーヴがこの地上を歩くことはもう2度とない。しかし、彼の死が、何らかの形で再生医療研究の進展や、脊髄損傷の患者を回復させる治癒法の探求の推進に役立つとしたら、リーヴが頭しか動かせない車椅子で最後まで見続けた夢、「私は再び歩く」という夢は、時を隔てても実現したことになるのである。