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2007/02/08 「不都合な真実」と「環境問題のウソ」

Amazon.comで購入した、「An Inconvenient Truth」のDVD版を見た。日本でもちょうど一部の劇場で公開されているのでは。元米副大統領アル・ゴアが地球温暖化の脅威とそれに対する対策を説くドキュメンタリー。ゴア自身のモノローグと彼が開催しているフォーラムで撮影された映像を取り混ぜ、分かりやすく仕上がっている。日本ではDVDはまだ未発売のようだが、「不都合な真実」として本が出ている。

フォーラムで使用されたデータやグラフもインパクトがある。そして、世界各地、20〜30年前の写真と現在を比較した写真が圧巻。消えたパタゴニア氷河、消滅しかかっているキリマンジャロの万年雪、北極海でも次々に消えてゆく氷河。もしもこれが本当に地球温暖化の影響だとしたら、これは空恐ろしい話ではある。

もっとも、分かりやすくインパクトがあるということは諸刃の剣でもあって、都合のよいデータだけを取捨選択しているのではとの疑念を払拭することはできない。将来予測のシミュレーションも、ある与件を固定するなら、雪だるま式に、一方にどんどん偏って行くのは、自然科学の計算のみならず、将来キャッシュフローの予測や年金数理計算、人口動態の推計など、将来予測を扱う際に誰しも経験する傾向でもある。果たしてこの温暖化仮説はどこまで信頼できるのか。

「環境問題のウソ」(池田清彦/日経BP企画)なる本を検証のために合わせて読んだら、この著者は地球温暖化はウソであると断言している。

地球温暖化を示すというデータには、汐留に超高層ビルが林立して港区の気温が上がったような、局地的City Warmingの影響が入っているのではないか。二酸化炭素と気温の関係ははっきり証明されていない。むしろ太陽黒点が現す太陽の放射エネルギーと気温に相関がある可能性が強い。など、この本の主張を読むに、やはりそっちが正しいのかという気がしてくるのも確か。

確かに、地球温暖化を叫ぶ環境運動家には、眼を三角にして、我こそ正義と自説をふりまわす者も多い気がする。ただ、常識的に考えるに、地球温暖化は起こっていないと主張する科学者のほうが、より公平で曇りの無い眼を持っていると本当に言えるのだろうか。タバコ会社からの巨額の補助金を貰い、タバコが健康に与える被害は大したことがないという研究を発表し続けた科学者がたくさんいることは、「タバコ・ウォーズ」などの本に詳しい。

「地球温暖化は起こっていない」、あるいは「温暖化と二酸化炭素は関係ない」と主張する陣営は、まったくどこの企業の利害も代表していないのか。化石燃料を扱う石油業界は、アメリカにあっては一大ロビー勢力。省エネルギー、環境負荷削減が不利に働く業界は、エネルギー使い放題の大量消費社会アメリカには腐るほど存在する。その点では、地球温暖化(Global Warming)は、もはや科学の問題というより、極めて政治的な問題になりつつある。単純に「地球温暖化は嘘である」と信じ込むのも、これまたあまりにもnaiveだという気がするのだが。

「環境問題のウソ」のp.15、図3。気象衛星から測った対流圏の気温のグラフだが、何事も明快に断言する著者は、このグラフから読み取る気温のトレンドを「それほど上昇している様子はない」と主張する。しかし、このグラフを虚心に見るに、94年頃から、平均値よりも温度が下ブレする月がほとんど消滅し、どの月も常に平均値よりも上にブレ続けているように読み取れるのである。人は自分の見たいものしか見ない。もっとも同じ本で語られる、ダイオキシン問題、外来種問題のウソについての主張は、実に筋の通った話であると思うのではあるが。