MADE IN JAPAN! 過去ログ

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オーストラリア特別編 (2005年5月)

GWの10連休をオーストラリア、パースで。思い出したことを順不同でボチボチと書き継いで。


(Perth出身で吉本に)

両親の家の近所に住む、オーストラリア人夫妻の息子は、西オーストラリアの大学で日本語を学んだ後、アメリカ資本の会社に就職して会計士の勉強している。彼の同級生で、同じく日本語を学び、大学を主席で卒業したという男性は、卒業後日本に渡り、なんと吉本興行で日本人と漫才コンビ組んで芸人をしてるらしい。帰国して、吉本のページを調べると確かにそういう芸人が存在する。ま、親は泣いてるのではないかと心配だが、オーストラリアもアメリカ同様、転職は当たり前の世界のようだし、とりあえず芸人になってみて、ダメだったらまた別の職でも探すかという気分なのかもしれない。しかし、西オーストラリア、Perthから吉本。世界も狭くなったなあ。


(スカイ・キャプテン)

東京への便で眠い目をこすりながら見た。まあ、一種のアナザ・ワールド物というか、一風変わったファンタジー。CGはよくできているのだが、いまひとつストーリーにのめりこめない。映像はスタイリッシュで、ヒロインの女性記者役など、本当に昔の映画やピンナップが動いているかのよう。まあ、コスチュームやソフト・フォーカスでボンヤリと撮ったせいもあるのだろうが、あまりにもリアルな「昔感」が漂い過ぎ、綺麗な女優なんだが、あまりにも古風すぎて人気は出ないだろうなと余計な心配まで。それにしても、アンジェリーナ・ジョリーは、いったい何のために出演していたのだろう。


(さおだけ屋はなぜ潰れないのか?)

先日見た雑誌に、「ネーミングでヒットする商品」か何かの特集があって、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学」(山田真哉/光文社新書新潮社)が例にあがっていた。住宅地をトラックで「さおだけ〜」と連呼して売り歩く。確かに、なぜあんな商売で生計が成り立つのか、考えてみると不思議。ふと手にとってみたくなる題名だ。

昨日、この著者がTVに出て自著の解説をしていた。実は、「なぜ潰れないか」部分については私も興味があって、その部分だけ以前本屋で立ち読みした。平易な表現と分かりやすい実例で会計を説明する本。「さおだけ屋の秘密」については、読むと「な〜んだ」と思うが、イマイチ釈然としない部分が残るといえば残るような。

パラパラ読んだ限りでは(<買えよ)、「さおだけ」に限らず他の事例に対する説明も、著者が身近で得たごく限定された情報から推測、類推しただけのものと言えばその通り。思考実験としては面白いが。楽しく笑って読めて、雑談にちょっと使える程度の会計知識が身につくという意味では重宝な本か。


(TCの換金限度)

外国行く際は、普段ならクレジットカードと少々の現金を持ってゆくだけ。TCはもう10年以上使ったことがない。しかし、今回はちょっと頼まれた件があり、ある程度まとまった額のアメックスTCをA$額面で持参。Westpacという銀行は現金化に際して手数料無しだというので窓口に。しかし、Westpacに口座を持ってる客以外は一度に1000ドルまでしかダメだという。なんだかケチくさいな。

これで思い出したのがアメリカの銀行。アメリカで長期出張者がTCを現金に換えたいというのでユニオン・バンクに連れて行くと、一度に300ドルまでしか現金化できないと言われたことがあった。アメリカの銀行のテラーは、日本の銀行員ほど訓練されていないし、エー加減なのも多い。係員によって言うことが違うというのも、銀行に限らずアメリカ社会の特徴で、他のテラーならまた違った限度というのもありうる話なのだが、オーストラリアでも同じような雰囲気あり。

まあ、アメリカの銀行は、自分の口座であっても1日に300ドルしかATMで現金を下ろせなかったから、300ドル限度というのも理解できない金額ではない。カード・小切手社会のアメリカで、大量の現金持ってるのは麻薬の売人か犯罪者くらいだろう。一度、300ドルを2日連続で引き出したら、「あなたのATMカードは盗まれてませんか」とコンピュータが自動に打ち出した警告メールまで自宅に届いた。その点、1回に200万円、300万円と現金引き出し可能な日本は、銀行カード偽造犯にとっては天国のようなもんだよなあ。


(GOLDEN CENTURY RESTAURANT 金唐海鮮酒家)

Perth ダウンタウンの中華。遅い昼に訪問して、飲茶を。店員が次々に見せに来るお盆から、プリプリの甘いエビやらひき肉やらが薄い衣に包まれた点心、バラ肉の蒸し物など、あれこれと小さな蒸篭を選んで積み上げて。おかゆやら焼そばを貰うのもまたよし。周りは中国人の客ばかり。

アメリカ西海岸にも、中国人経営で、気軽にDim Sumを食べさせる店はたくさんあった。Perthにしてもよい店が何軒も。日本にも中国人がずいぶん増えたが、気軽な飲茶の店があんまり増えた様子がないのがなんだか不思議な気がするな。


(DUSIT THAI RESTAURANT)

ここはタイ人経営の割と立派なタイ料理の店。トムヤムクンをホットでと頼んだら本気で辛い。生姜の欠片やらレモングラスやら、何やら知らぬ葉っぱやら、食べられない香辛料がそのままボウルに入っている。そういえば、以前タイにいった時もこんなだったような記憶があるな。

グリーン・カレーやら焼そばやらなど、ポピュラーなものあれこれ。タイ米のスティームド・ライスを鉢から皿に取り、2種類のカレーを混ぜたり、辛いソースかけたり、焼そばと一緒に食したり。こういう汁かけ飯ってのは、日本、韓国、中国、東アジア、東南アジア、はてはインドまでカバーできると思うが、米食あるところ、アジア飯の原点だよなあ。


(The 9/11 Report:同時多発テロ調査委員会報告書)

帰りの機内で「The 9/11 Report」を読んでいたが、やはり内容的には飛行機の中で読むには適してない。<当たり前か。半分ちょっと読了したが、後半はまた後日に。しかし日本に帰ってくると英語の本を読む気力が萎えるなあ。

National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States、911同時多発テロ事件に対する調査委員会が作成した事件に関する公式報告書。後半部分は今後のテロ対策に対する政策提言となっている。発売と同時に、アメリカAmazonでベストセラーになった。全文はネットでも公開されているのに、本を買う人がこんなに多いのは奇妙と新聞で読んだが、やはりプリントアウトするのと印刷した本ではぜんぜん読みやすさが違う。そもそも全文をプリントアウトしたら、そのほうが金かかるのでは。

読み始めて感心したのは、このレポートが実に読みやすい平易な英文で書かれていること。Newsweekよりも更に読みやすい。日本のお役所が作成した「なんとか白書」は読んで眠くなるようなのばかりだが、このレポートは読み物として成立している。4機の航空機がハイジャックされる経緯をまとめた冒頭部。時系列を追いながら同時平行で、それぞれの便に何が起こったかを淡々と記述してゆく文体は、こう言ってはなんだが、ハードボイルド・ノベルか映画のシナリオを読んでいるかのよう。

FBIの調査やFAAの交信記録などから再構成した事件の詳細は、事実にしかない奇妙な重みに満ちている。順不同で思い出したことのみ。( )内が私の感想。

・アメリカ国内の航空機チェック・インに際しては、全乗客がCAPPS(Computer Assisted Passenger Prescreening System)というシステムでスクリーニングされることになっており、主犯アタのチェックインに際しても、本人搭乗後にチェックインした荷物を積み込むクラスとして分類されていたが、犯行を防ぐ手立てにはならなかった。(こんなスクリーニングがされてるとは知らなかった。おそらくアラブ系のパスポート・ホルダーはみな同様のフラグが立つようになってるのだろう。そういえば、よく出発が遅れるアナウンスで、「荷物の積み込みに時間を要して」とか「お客様のご到着を待って」とかあるが、爆弾だけ積み込むテロ回避のこんなチェックがかかってた場合もあるのだろう)

・ハイジャックは、乗客からの多数の航空電話によって発生からすぐに報告されている。(飛行機で携帯がつながるはずないなどとのトンデモ系「陰謀説」があったが、アメリカ国内線の飛行機には10年ほど前から、ほとんどの座席の背にGTE AirPhoneが設置されており、飛行中も通話は自由だ。もっともこの報告書に採録された、最後の瞬間に交わされた痛ましい会話を読むと、電話が通じることが幸せなことなのか結論は出ないのだが)

・乗客の報告によれば、ハイジャックの凶器は刃物と爆弾を所持しているという脅し(爆発物そのものは未確認)であり、フライトアテンダントをまず刺して全員を威嚇し、パイロットは殺害されたものと思われる。(しかし、なぜ刃物が持ち込めたのか。そこが不可解だ)

・犯人達は、機内放送を行うインターコムの操作方法が分からず、「静かに席についていろ」という乗客向けの機内放送をするつもりで無線を発信し、この発言を管制塔が受信している。(ハイジャックされた航空機は、ボーイング757と767。ゲームのジョイスティックのようなバーで操縦し、ほとんどの操作がコンピュータ制御となっているエアバス機は、テロリストの手に余ったのだろうか。そしてなんとか操縦ができても、無線や機内放送の操作まではやはり分からなかったのだ)

・FAA(連邦航空管制局)のコントロールセンターの記録には、「アクセントの問題かもしれないが、彼ら(テロリスト)は「we have planes」と言ってるように聞こえるんだ」という会話が残っている。(plane(単数)ではなくplanes(複数)。テロリストが複数の航空機を支配した。それが日常を急に襲う恐怖の始まりだったのである)

・ハイジャックされた航空機をインターセプトし撃墜することについては、チェイニー副大統領が確かに承認している。しかし実際には迎撃は間に合っていない。(乗客の反乱によって墜落したUA93便は実は撃墜された。ペンタゴンに突っ込むはずだった飛行機も撃墜され、ペンタゴンで爆発したのはミサイルだ、などとあれこれトンデモ系「陰謀説」があるが、撃墜命令の存在を公表した上で撃墜を隠してもアメリカ政府は何の得もしない。根拠に乏しく理屈に合わない、信用するに足りない説だ)

・ニューアーク発UA93便は、ハイジャックされたが、乗客が反乱を起こし、ホワイトハウスに突撃するという目的を果たさずにペンシルバニアに墜落した。テロリストに立ち向かう直前、多くの乗客がAirPhoneで家族に電話をかけている。ある乗客の最後の会話として、「Everyone's running up to first class. I've got to go. Bye.(みんなファーストクラスのほうに走って行く。私も行かなきゃ。じゃ)」と記録されている。回収されたボイスレコーダーに記録された操縦席外の怒号と混乱の音声に、自らの家族の声をはっきり聞き取った遺族が何組もいたそうである。(この電話をした勇気ある乗客が女性であることにまず感嘆。パイロットはすでに殺されており、乗客がテロリストを鎮圧しても、墜落はまぬがれえなかっただろう。しかし、彼らはおそらく暴力で自らの自由が制圧されることに耐えられなかったのであり、アメリカの何かを確かに救ったのだ)

全般的に重たい本であり、長い休暇が終わった後では後半部分を読みあぐねて机に積んである。この手の報告書ってのは翻訳本が出るのだろうか。あんまり見たことはないような。

(ゴルフコースにカンガルー)

 春先に比べると幾分少ない気もするのだが、家の周りやゴルフコースには、やはり野生のカンガルーがあちこちに。一般的には臆病な動物であって、人間が近づくとすぐに逃げるのだが、どういう訳かゴルフコースにいるカンガルーは、人慣れしてるのか、あんまり逃げないのである。

バンカーの上なんかにノタっと立ち止まっていられると、なかなかショットの邪魔になる。フェアウェイで、グリーン方向に何匹もいるとボールが当たると嫌だなあとプレッシャーを感じたり。そういえば、シカゴでゴルフした時、うちの上司のショットが野生の水鳥を直撃して、「鳥殺しショット」と呼ばれたものであるが、「カンガルー殺し」はシャレにならない。いやまあ、鳥だって実際にはなあ。

ブッシュにも、のんびり寝そべってる野良のカンガルーが多い。ボールが行ったからとブッシュに入ると、のんびりなごんでいたカンガルーといきなりハチ合わせして、驚いたカンガルーに蹴られて怪我した人もいるというから気をつけないと。それにしても、天敵もなく、年がら年中のんびりと。実にうらやましいような境遇である。


(北京ダックとスノークラブ)

 いつもカニを食する、Perthダウンタウンの「Diamond Restaurant」だが、今回は前日に北京ダックも注文。BYOでビールと赤ワインを持ち込んで。珍しいのは、ダックの皮の下に、時折中華の付け合せで出てくる海老センベイが敷いてあること。これも一緒に皮にくるんで食べる。昔は、バーズウッド・ホテルの北京ダックなんか美味いと思ったもんであるが、最近はあんまりよくないとのこと。

そういえば、Perth中心街のショッピング・モール内フードコート、なんとかいう店のスペシャル・フライドライスが絶品で、人生で食したチャーハンの中で確実にベスト3に入ると思ったもんであるが、今回聞くと、いつの間にか閉店したのだという。中国風というより、マレーシアかシンガポール風味なのだと聞いたが詳しいことは知らない。モヤシが入ってるのが珍しかったよなあ。しかし、もうあれが食べられないとは実に残念な話である。

ダックの後で、大きなスノークラブをブツ切りにしたチリ炒めを。これまた絶品。オーストラリアは移民の国だから、チャイニーズは中国人が、タイ料理はタイ人が、イタリアンはイタリア人がやっているのがよい。

この「Diamond(中華名失念)」も従業員もお客も中国人ばかり。アメリカのチャイニーズ・レストランも美味いところはもちろん中国人の客が多いのだが、そういえば、中国人が北京ダックやらカニやら食べてるのをあんまり見たことがないな。ま、おそらく日本人が毎日、テリヤキ・キチンや天ぷらやサシミばかり食べてるわけではないのと同じ理屈なのだろう。隣の芝生は青く見える。大きな名も知らぬ魚を蒸しあげたようなのを皆でつついてる中国人のテーブルを見ると、あっちも美味そうだなあといつも思うのであった。

(ハングリー・ジャックスとバーガーキング)

 以前、「マクドナルド化する社会」という本を読んだことがある。アメリカに由来する、規格品大量生産、大量消費社会が、均一性を担保するトータルなシステム込みでいかに世界に広がっていったかを解き明かすキーワードとして、「McDonaldization」が使われている。

ここPerthでも、勿論、「マクドナルド」も「KFC」もおなじみ。しかし例えば、「Red Rooster」なんていうチキン・ロースト主体のファスト・フード・チェインもあって、これは西オーストラリアが発祥らしい。で、向こうでお昼に立ち寄った店の看板が左。アメリカでファスト・フードの看板を見慣れた人なら、あれ?と思うのでは。「Hungry Jack's」とあるが、「バーガーキング」の看板そっくり。

店内のメニューにも、「whopper」なんてのがあり、明らかに「バーガーキング」と同じである。Hungry Jack’sのページを見ると、やはりここは米バーガーキングのフランチャイズ。オーストラリアではここPerthに第一号店を「Hungry Jack's」として開店。一時、「バーガーキング」とのダブル・ブランド戦略を取り、シドニーなどでは両方のブランドが並存したらしいが、現在では「Hungry Jack's」ブランド一本に絞って全オーストラリアに店舗を展開しているのだそうだ。

しかし、なぜ「バーガーキング」ではなく「ハングリー・ジャックス」なのか。やはり、王室があり、「Queen」を元首にいただく英連邦の一員としては、店名に「King」があるのは都合悪いのでは。そうだそうだ、きっとそうに違いない。と合点していたのだが、念のためにネットで調べてみると、なんのことはない英国には「Burger King UK」がキッチリ存在するのであった。だったら「キング」忌避の理屈は通用しない。う〜む。人生、不可解なり。


(出発時の成田)

パース行きのカンタスは20:45成田発。離陸して機内でサービスが始まるのは22:00近いだろう。空港で食事を済ませて機内では寝倒すのが得策か。どちらにせよ、成田から海外に出る時は、出国前に「寿司田」で一杯やるのが慣わしなのだが、夜の成田は大混雑。店の前には、客が並んで席を待っている。こんな混雑も初めて見たな。

和食系統は軒並み一杯。方針転換して、中華で坦々麺とビールで夕食。ボーディングも定刻。飛行機も定刻にプッシュ・バックして順調に離陸。夕食は断って読書と映画。12時過ぎには睡魔が襲ってきた。しかし、やはりエコノミーってのは実に座席が狭い。A330の座席は、2-4-2。ウインドウ・シートを選択してある。結構混んでたのだが、隣の席が開いてたのでちょっとは助かった。

(マスターカード・ジュニア・マスターズ)

 Perth滞在中は、ゴルフを2度。いつもの「The Vines Resort」 2日に回った時はあいにくの雨。西オーストラリアは秋口から雨季なのだ。気温が下がるにつれて湿度が上がる。冬は湿度高く、夏は低い。これはアメリカ西海岸と同様、東京とは正反対。季節ごとの湿度の違いが快適な気候の元なのであった。

しかし、雨の中でゴルフするのはあんまり快適ではない。5ホール目まで行ったところでいよいよ雨足は激しく。ティーグラウンドでしばし止むのを待ったが、後ろの組も追いついてこない。おそらくプレイを中止してクラブハウスに戻ったのだろう。このホールだけプレイするかとボールを打ったが、グリーンに水が浮いてきており、パターは強く打ってもしぶきを上げて1メートルでストップ。こらアカンということでプレイ終了してカートで帰る。しかし、まだプル・カート引いてプレイ続行しているカップルがいたのには感嘆。

しかし、次の日からは好天続き。このクラブは38ホールあるのだが、コースの半分を使って、「マスターカード・ジュニア・マスターズ」なる競技会を3日から開催。暇にまかせてコースまで見物に行った。オーストラリアの高校生以下から選抜した選手だが、グリーン脇で見物していると、寄せのロブショットなどまるでプロのよう。実に上手い。

ギャラリーはいないものの、所々にこのようなリーダー・ボードが。これは3日目のものだが、帰国してからiseekgolf.comでチェックすると、女子は韓国系のCho選手が優勝。男子はShin選手が優勝したそうである。

5/5に2回目のラウンド。この日は快晴で気持ちよい天候。距離のメートル表示と借りた古いクラブにはてこずったが、キッチリ当たると古いクラブでも軽いドローがかかって打球は綺麗に飛んでゆく。これでスコアもよければ文句なしなのだが、日本でずっとプレイしていない身ゆえ、そんなこともなく。南半球の秋空の下でのんびりプレイ。気分転換には最高である。

(戦争請負会社)

「戦争請負会社」(P.W.シンガー/日経BP企画)を持参して読了。

米軍統治下のイラク国内で、米軍の下請け民間企業に勤務する米国人が殺害されたのは日本でも報道された。紛争地帯において、補給や食事の供給、収容所の維持警備などを、民間企業がお金で請け負っている事実は、私自身その時に始めて知った。世界には実は、軍事関連活動を商売にしている民間企業が多数存在する。この本は、米ブルッキングズ研究所に勤める著者が、PMF(Privatized Military Firm:民営軍事企業)と呼ばれるそれらの企業の成り立ちや活動の実態を詳細にレポートするもの。一気に読了。実に面白い。

PMF:民営軍事企業の活動は、政府正規軍の兵站や補給、警備などの後方支援に留まらない。彼らが請負するのは、世界各国を舞台とした、軍事戦略の立案・コンサルティング・軍隊の訓練から、はては自ら保有する軍事力を駆使しての実際の戦闘行為までに及ぶ。

南アフリカに本社を置くPMF、エグゼクティブ・アウトカムズ社は、内戦により転覆の危機にあった西アフリカ、シエアレオネ政府から、反乱軍の鎮圧を「受注」する。「契約」を交わした後、自らの会社に所属する千数百名の兵士を近代装備と共に投入、契約通りその国の反政府軍を壊滅状態に追い込んでこの政権を救った。もちろん彼らはそれに対する「支払」を受けている。アフリカの小国とはいえ、ひとつの国の命運を一民間企業が左右していたというこの話は、まるで映画の中の話のようだが、実話なのだ。

軍事オタクなら常識なのかもしれないが、この手の話はあまり日本のメディアでも扱われたことがない。このようなPMF:民営軍事企業には、冷戦の終結により余剰となった元軍人が多数流れ込んでおり、グリーンベレーや特殊部隊に所属する現役精鋭隊員も、軍隊の何倍もの報酬に惹かれて続々とPMFに転職しているのだという。世界における傭兵の歴史を概括する部分も、関連知識としてなかなか面白い。

もはや軍拡の時代ではない。しかし、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、アフガン、イラク、アフリカの内戦と世界に紛争の種はつきない。政府の正規軍を投入するより我々が行ったほうがずっと効率がよいというのがPMFの理論である。しかし、世界がここまできているとは実際のところ知らなかった。

そういえば、昨日の、イラクで邦人が行方不明になったというニュース。彼が勤めていたという、ハート・セキュリティ社も、おそらくPMFのひとつだろう。この日本人は元自衛隊の空挺部隊員だったという。この会社で何をやっていたのか現時点では不明だが、イラクで米軍の支援を行うPMFに雇われている日本人がいたということ自体、興味深い事実であり、これから日本のメディアでもあれこれ報道されるだろう。この本も増刷して結構売れるかもしれないな。

さて、ここから先は余談だが、もともと国家が請負うのが当然と考えられていた「安全保障」が民間に委託できるのなら、「外交」はどうだろう。日本の職業外交官は、対アジアでは土下座外交しか能がなく、欧米には何も物が言えない割には、在外公館では特権階級として湯水のように税金を使って豪華な暮らし。外交というほどの外交など何も行っておらず、日本の常任理事国入り支援も皆様の善意にすがるしか策がない現状。

この程度の外交であれば、国際ロビーイングに長けた大物で構成する外国のPDF(Privatized Diplomacy Firm:民間外交企業)に金で委託したほうが効果あるんではないだろうか。ま、もしも、そんな企業があったらの話だが。もっとも、国際政治を操った巨魁、アメリカ元国務長官ヘンリー・キッシンジャーは、自らのコンサルティング会社を経営している。探せば意外に、もうそんな会社も実在しているかもしれない。

(カンタス航空)

Perth往復はカンタス便を使用。マイレージは使えないのでエコノミーで。座席の間隔は狭いのだが機体は自社発注のエアバスA330。エコノミーにもすべて座席の背に液晶TVがついており、オンデマンド・ムービーとなっているのはなかなか便利。

もっとも東京出発が夜の9時前でPerth到着が翌日の早朝。食事やら飲み物のサービスなどほとんど誰も期待していないし、眠れればよい便であるからして、オンデマンドの映画も持ち腐れか。往路のフライト・アテンダントは禿げたオッサンだが、なんというか、オージーらしいあまり気の利かないガサツなサービス。復路のほうがまだちょっとは仕事してる印象あり。まあ、エコノミーってのは所詮こんなもんか。

(Shall we Dance?)

Perth行きのカンタス便で見た。もちろん、周防正行監督の「Shall we ダンス?」をハリウッドがリメイクしたもの。余談だがオーストラリアではもうDVDが発売されている。そういえば「ナショナル・トレジャー」も売ってたな。まあ、国コードが違うから日本に持ち帰っても見ることはできないようだが。

ハリウッド版とはいえ、原作の優れた部分はほとんど損なわれていない。というより、過去日記に書いたことがあるのだが、そもそも周防オリジナルがハリウッド映画をよく研究して作ってあるというべきだ。ハリウッドの製作側も細かい演出に至るまで、ほとんどそのまま使って違和感がなかっただろう。

平凡なサラリーマンが、通勤電車の窓からダンス教室の窓辺で憂いに沈む美女を見つけるというのが日本版の導入部だが、この設定を使うために、アメリカ版では主人公をシカゴ、ダウンタウンのアパートメントに住む弁護士として設定している。まあ、確かに郊外の一軒屋では電車で通うのが妙だし、地下鉄ではふと外を見上げてダンス教室を見つけるという設定が使えない。よく考えたもんである。

役所広司も名演だったが、リチャード・ギアも巧い。真面目な良き夫、父親がダンスにはまってゆく過程を渋く演じている。最後に奥さんを迎えに行くところは、なんだか往年の「愛と青春の旅立ち」を思い出した。盛り上げ方がちょっと似ているのである。年配のダンス教師がアル中気味であるとか、リチャード・ギアの奥さんが働いていることなど、設定の微調整もご愛嬌。

日本版で竹中直人や柄本明が演じた役については、個人的にはアメリカ版のほうが自然で好ましい気がした。日本版では竹中の怪演は映画を成立させる必須のファクターなのだが、アメリカ版に竹中をそのまま放り込むと、全体のバランスがやはり壊れるだろう。そういう面では竹中の存在感にも恐ろしいものあり。「引越しのサカイ」のオッサン(名前忘れたなあ)演ずる役については、日本版のほうがずっとメリハリがあって面白い。もっとも、あれは監督の演出というより個人技の世界か。最近見ないが元気なのかね。

画面の色はやはりアメリカそのもの。夜のシーンは特に陰影が深く、まさにハリウッド映画。夜の飛行機から見ると、日本の夜景は蛍光灯の色だがアメリカの夜景はオレンジの電球色。ちょうどそんな風に違うのだ。

ジェニファー・ロペスは確かに魅力的ではあるが、日本版で演じた草刈民代の、あのちょっと冷たく高貴な感じがない。よく言えばもっとセクシー、悪く言えば下品。大会の前にギアと2人だけの深夜のレッスンは、濃厚な猥雑さと魅惑が絡み合う印象的なシーン。あれはあれで成立しているのだが、日本版の淡くホロ苦いプラトニックな情感にはやや欠けているような。ま、そもそも彼らは肉食獣だからなあ。

全般的に感心したのは、やはり周防日本版がいかによくできているかということ。もっとも、その秀逸さは邦画の伝統そのものとは関係がなく、アメリカ映画の文法をきちんと踏襲した上に成り立っているように思うのだが。日米の映画を比較する視点で見るとなかなか面白かった。


(日本帰着)

昨日夜にオーストラリア、パース空港発。出国手続き後の免税店でワインを物色。カンタス便は午後10:45分と出発時刻が遅いことと、金曜夜ということもあり、広い売り場に店員はオージーの禿げたオッサンとバアさまの2名。売り込みに来た店員に、なんだかんだ聞くのも面白いし売り上げにも貢献すると思うが、商売気ないな。

いつも買っているマーガレット・リバー、Amberleyの赤を3本、自分でレジまで。前回は出発前のドタバタで、ワインの瓶をそのままDFSの袋に入れてハイヨと渡されるというハメに陥った。今回は「3本入ってキャリーする紙のボックスに入れてくれないと買わないよ」とバアさまに通告。レジ下をあれこれ探していたが無いようだ。「だって3本お仕着せのセットで売ってるあっちにはボトル入りで並べてあるよな」と言うと、「そうなんだけどねえ」と心もとない。

結局無いとのことで、禿げのオッサンにバアさまが聞くと、「OK、6本買ったサービスのこのバッグでいいよ」と内部にワイン6本分の仕切りがあるリュックをレジ下から出してきた。まあ、紙でなくともこれで文句はない。精算済ませてワイン3本入れてもらったが、そのリュックには19.95$の値札つき。まあ、そんな価値ある物とも思えないしサービス品なのだが、なんだか儲かったような。こういうところが万事エー加減なオージー気質であるが、言ってみるもんだな。はは。

出発を待っていると、機材の準備に時間がかかっており、搭乗は10分程度遅れるとの放送が。海外の空港で日本行きを待っている時にこの手の放送があると、「boarding」と「便名」だけを判別して、日本人がゾロゾロとゲートにやってくる。これは格好悪いので是非止めてほしいものであるが。20年、30年前に「ジャルパック」で行くところすべて添乗員がついていた海外旅行ではそんなこともなかったのだろう(その代わり別な意味で恥ずかしいことがたくさんあったに違いないが)。しかし、実態は今日でも大して変わってないのだよなあ。

搭乗は更に遅れ、結局1時間近く遅れたか。座席列番号を区切って順番に搭乗というのもよくあるアナウンスだが、GWのように特に日本人が多い時期に、海外の搭乗ゲートでこんなアナウンスを英語でやってもほとんど意味ないのであった。誰かがゲートに行くと付和雷同してドヤドヤ行くだけなんだもの。

ちょうど1時間遅れで離陸したが、その後は順調で成田到着はおよそ30分遅れまで短縮。カンタスは、日本乗り入れ航空会社では弱小ということか、到着のゲートがいつも遠く、入国審査までずいぶん距離あり。バゲージ・クレイムでもだいぶ待ったが、税関通過して外に出たのが昼前の11時。スーツケースを宅急便に預けて11時19分の成田エクスプレスに乗れたから、結構順調であった。やはり、日本に帰るとほっとするなあ。