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2005/11/03 「新ばし 笹田」で一杯

水曜は夕方から社外で打ち合わせ。3年越しの懸案であったが、満足できるよい結果が出てよかった。オフィシャルにはまだあれこれあるが、ずいぶん肩の荷が下りた気分。個人的な祝杯をかねて夜は、「新ばし 笹田」で一杯。

ご主人は、相変わらず快活で真面目な働きぶり。奥さんも頑張っている。

生ビールを一杯。前菜はイクラと、軽く干して炙った白魚。お酒に切り替えて「黒龍」。イカ塩辛は「しみづ」のにも似ている。クエ昆布〆に辛味大根をのせて。微妙な癖のある白身だが、昆布〆で旨みが重なり、大根にもよく合う。サトイモ茎を炊いた餡かけは、前回同様食感が心地よく美味し。

本日は、他のお客さんは遅い始まりとかでカウンタは私一人。ご主人と食材の話などあれこれ。「しみづ」のことやら、「最多来訪記録」氏来訪のことも。色どりがちょっと単調で申し訳ないです、と言いつつ出されたのはお造り盛り合わせ。小ぶりだがバランスよくまとまっている。ツマのあしらいや、大葉の下に拍子木の長芋が置いてあるところなど、いかにも料理屋らしい手前。ヒラメは実に上質な脂で美味い。赤ムツも真っ白で滑らかな脂がまるで舌の上で溶けるよう。ブリもヤリイカも結構。

赤ムツは金沢でノドグロだったっけ、焼いたのも実に美味いですよねとご主人に話すと、では、焼き物もノドグロ照り焼きにしますかというのでそれを注文。鴨ロースとどちらにするか迷っていたとのこと。鴨も美味そうだが、それはまた今度。おまかせコースだけの店だが、食材の変更が臨機応変に効くのがカウンタのよいところ。

お椀は甘鯛。白ネギに軽く焼き目をつけ、南蛮風味にあしらう。どこかで習った仕事ではなく、自分の考案だとか。自分で店やってよかったのは、自分の考えで色んなことが自由に試せるし、それが楽しいと。スッキリした出汁なのだが、甘鯛のフックラした上品な脂がネギの香りと溶け合って実に美味し。

炙ったクチコ。これも上等で酒が進む。焼きものはさきほどのノドグロ、軽いテリヤキ風味。身が素晴らしく柔らかく、香ばしく焼きあがった皮目とともに口中で上品に溶けてゆくよう。「黒龍」から切り替えた「天狗舞」飲みつつ、なんだか懐かしくも金沢を思い出した。

その後は、ミニおでん。串に刺した鳥皮、大根、海老芋、すり身揚げ、ウズラの玉子。遊び心を感じるすべてミニサイズで炊き上げた小鉢。出汁が素晴らしく深く美味い。焼き物をノドグロにして魚が続いたので、「鯛かぶら」からちょっとチェンジしてみましたと。なるほど。そして食事は、いつも通り炊飯土鍋で目の前で炊き上げ、むらし加減も計ったツヤツヤの新米ご飯。ご飯だけでもいくらでも食べれる気がする。赤だし、お新香、山葵漬、佃煮なども気が利いており実に結構。最後は白玉と小豆のデザート。甘みより豆の旨みのほうが際立つ酒飲みでも大丈夫なアッサリ味。

西新橋の雑居ビル1階。引き戸をガラリと開ければ、目の前にお客の背とご主人の顔が見える。立ち食いの寿司屋の趣き。現に前の店は寿司屋だった。おしゃれな街の一等地にあるビルの中、砂利を敷いた通路に灯篭が点り御香が焚かれてあるようなバブリーな店ではない。しかし、真っ当な料理人が独立してまず始める飲食店の原点は、どこでもこんなものではないのかな。

しっかり修行したまだ若いご主人が奥さんと2人で一所懸命に全てを見計らって運営する小さなカウンタ和食店。私は「しみづ」の紹介で来たのだが、どこのメディアでも、まだ紹介されたことはないはず。まだまだこれからが勉強で、試行錯誤が続くのだろう。しかしいまから通い始めたら、おそらく、素晴らしい和食の店が立ち上がってゆくごく初期の段階を、客として一緒に体感する稀なる幸運に浴することになるだろう。接待で威張る年寄りのオッサンより、ごく普通に美味いものを食べたい人に向く。肩の力を抜いて、のんびりと料理を楽しめる。そう女性にもお勧めだ。

何度かこのページで書いたので、すでに何件か電話番号の問い合わせがあり。確かにインターネット・タウンページにも出てこない。ご主人に聞いたら、個人の電話を移設したからですかねえ、おかしいなあ、と恬淡としてるのだが、そもそもタウンページへの登録してないのでは(笑)。ご本人の許可も得たし、宣伝に電話番号、住所もここに記して。お暇なら是非どうぞ。

「新ばし 笹田」 
03-3507-5501
東京都港区西新橋1-18-8 尾坪ビル1階

定休日:日祝日
営業時間:p.m.6:00〜(終了時間不定:応談)
料理はおまかせコースのみ:8千円と1万円〜
事前の電話予約推奨