MADE IN JAPAN! 過去ログ

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2005/10/27 再び「新ばし 笹田」

当日昼過ぎに電話して、先週に続いて2度目の訪問。入店してしばらくはカウンタに私一人。ご主人笹田氏はまだ34歳と若く、謙遜しつつも実に真面目に自らの仕事を語る眼に力あり。やはりまだ客足には波があり、月曜も危うく「坊主」になるところ、「しみづ最多来店記録」氏が来訪して危機を救ったとのこと。一人でカウンタ独占というのも逆にうらやましい気がするよい店なのである。

突き出しが出て、まず生ビール1杯。その後で、お酒は「天狗舞」本醸造を。春菊、菊花、シメジ、松茸のおひたし。シメジの旨みと松茸の香りが上品な出汁と溶け合って。続く小鉢は、サトイモの茎を炊いたもの。軽い餡かけにしてある。ずいきの親戚のようなものらしいが、下拵えが大変だと。独特の野趣ある風味が歯ごたえの中に幽かに残るのが面白い。

もう名残ですと松茸を炙って。市場では先月より何倍も高くなり、「うちではそろそろ使えなくなってきました」と。お客のニーズと勘定との兼ね合いで、どの季節にどんな素材をどの期間使えるか、店が軌道に乗るまで今後更に真面目な試行錯誤が続くだろう。なるほど。

続いてお造り。タイは小ぶりのものというが脂が乗って美味い。ハモは焼霜、これまた美味し。サバは軽い〆だが上品な脂、才巻き海老、上品な脂のカツオ。山葵用と生姜用と2つ手塩が出る。寿司屋のように一品一品ガツンとくるのではなく、少量多品種で上品に印象がまとまっているのがよい。その日のよい品物だけを入れるようにしているとか。確かにうなづける。

炙ったクチコが出てお酒が更に進む。「黒龍」に切替えてもう一杯。その後のお椀はスッポン鍋。思い入れがあるので通年で使いたい素材とご主人が。見た目の脂はあるものの、肉や魚のような濃厚さではなく、優雅で幽玄な味が出汁に溶けている。スッポンというのも実に不思議な美味さだ。三叉になった骨の周りの部位が入っていたのだが、ここの身肉が美味いんですと。確かにその通り。

目の前で行なうハモの骨切りがシャキンシャキンと綺麗な音。ハモは照り焼きに。皮目は香ばしく、身はふっくら。前回の奥久慈軍鶏の塩焼きもよかったが、これも実に美味い。最後は焚いた海老芋。コックリと出汁を含んで、甘みも旨みも十分に炊き上がっている。

ご飯は香り高い新米。熟練の料理人が面前で炊飯土鍋を使い、こまめに火加減を見て湯気の香りをかいだり、蒸らし具合を計ったり。そんな風に出来上がった炊き立てのご飯がまずかろうはずがない。寿司飯は古米がよいらしいが、炊き立てを食べるのならやはり新米。何もなしでも何膳でも食べられる。お新香と赤だしと一緒で更に美味し。

白玉と小豆のデザートで〆。仕事熱心なご主人は、食べる速度や好みを見計らいながら、よくお客を見ている。今年入籍したばかりという奥さんも、慣れないところを一所懸命頑張っているのがよく分かって好ましい。頑張ってもらいたいと応援したくなる店である。