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2005/09/29 「與兵衛」パリで国際出張握り / 「しみづ」


先週の書き忘れ、寿司屋訪問2軒。

土曜の夜は「しみづ」。1順目は立て込んでおり2順目のスタート。カウンタは満席、2階の座敷にもお客が入り、実に忙しそうだ。

先週の特別営業のことなど親方と雑談しつつ。お通しは、茄子の煮びたしを山葵醤油。お酒は常温でツマミを。ヒラメ。昆布〆はかるく酢橘を利かせて。スミイカゲソは軽く茹でる。アワビ塩蒸しは旨みあり。カツオも脂が乗っている。芥子醤油で。赤貝ヒモは鮮烈な香りが素晴らしい。サバは皮目を軽く焼霜に。シマアジ、小柱。九州のウニはそろそろシーズン終わりですと。生イクラ。塩辛をほんのちょっと。

握りに移行。マグロは筋間の身だろうか。均一に脂が入りシットリして旨みあり。コハダは1匹丸付けだが身も厚くなってきて、ここのシッカリした〆と酢飯によく合う。アナゴ、カンピョウ巻も相変わらず結構。

「與兵衛」

日曜夜は「與兵衛」。最近いつも予約が立て込んでいる。だいぶ先まで空いてないかなと半分諦めながら土曜夕方に電話。親方が出て、なんのことはない、「明日なら1席空いてますよ」と。しかし、珍しいな。

「思いついた時にフラっと立ち寄るのが寿司屋」というのは、昔の習慣に照らせば真実でもあろうが、私自身はそれほど形にこだわる観念は持っていない。入れないなら予約するまで。しかし、いつ電話しても恒常的に1ヶ月〜1ヶ月半先しか予約が入らないとなると、訪問する気がガタっと萎えて、いつしか足が遠のくのはこれまた事実なんだなあ。

日曜6時半に入店。お客はまだ他に1組だけ。親方から、11月にフランス、パリまで握りに行くとの話を聞く。お弟子さんを1名連れ、調理器具、調味料、米から寿司種の魚まですべて日本から担いで行くのだとか。いわゆる「国際出張握り」である。

「與兵衛」では、「はせがわ酒店」が厳選した素晴らしい酒を置いているのだが、この「はせがわ酒店」推奨の「醸し人 九平次」がこのたび、パリの名門ホテル、クリヨンに置かれることになりフェアをやる。その中のパーティーに「與兵衛」が出張し、クリヨンで30名に寿司を握るのだとか。パリのクリヨンというのは、コンコルド広場横にあり、前を通ったことが一度だけあるが、歴史を感じる建築の豪華なホテル。

「與兵衛」では、朝買ってきてそのまま切って握る寿司種がまず無い。すべて、熟成させる、煮る、〆る、漬け込むなどの仕事を施すので、日本からすべて材料を持参しても丁度よいくらいか。通関に関しても、一般的には海産物は規制対象ではないから大丈夫。万一の時の対策も考えているとのこと。話聞くとなかなか面白いねえ。

お酒はまず、当の話題の「醸し人 九平次別誂え」。軽い飲み口で爽やかな旨み。バランスの取れた品位ある酒。

まずいつものお通しの一皿。海老頭、ホタテ煮びたし、アワビ塩蒸し、アワビ肝、スミイカゲソは煮てツメで。次に出た魚のアラ煮は、濃厚な出汁にニンニクの幽かな風味がアクセントになっている。ツマミ第2の皿は、中トロヅケ炙り、ヒラメゴマ醤油ヅケ、ヒラメエンガワ甘酢ヅケ、〆てから皮目を炙ったイワシ。どれも素晴らしい。お酒は、「美丈夫」、「十四代本丸」と切替。

パリに持参する予定の寿司種のことなど親方に聞く。光り物4種を含む10種類だとか。フランスでも寿司ブームなのだそうだが、生の魚を切っただけより、煮たり〆たりした寿司種ばかりのこの店の寿司のほうがフランス人には受けるのではないだろうか。顛末がTVの取材でドキュメンタリーにまとまったりすると面白いのだが。

このへんでお茶に切り替えて握りを。赤身ヅケ、ヒラメ胡麻醤油ヅケ、甘酢ヅケ、イカ、車海老は甘酢に潜らせて。シマアジは炙った皮目が香ばしい。北寄貝も甘酢ヅケ。ここから光物に移行。キス、コハダ、サンマ、イワシ。〆加減も種の脂もそれぞれに違ってどれも美味い。漬け込みのハマグリは柔らかく、濃厚なコクのあるここのツメによく合う。肉厚のアナゴは色こそ沢煮のように白いが、ネットリと脂が乗る美味さは他に類を見ない。最後にシットリした玉子。どの握りも、いつもと変わらず美味い。おそらくパリでも同様に美味いだろう。