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2005/09/23 「おいしいもの、まずいもの、どうでもいいもの」〜イクラ丼2杯で7万円

「おいしいもの、まずいもの、どうでもいいもの」(佐川芳枝/幻冬舎)読了。 「寿司屋のかみさんが教える」と副題がついているが、著者は東中野、「名登利寿司」のおかみさんで、寿司屋の内実やお客模様などを描いたエッセイ「寿司屋のかみさん」シリーズが何冊も出ている有名人。

寿司種の話があれこれ書いてあるが、気楽な読み物で面白い。寿司マニアには物足りないかもしれないのだが。もっとも、今回の題名の「どうでもいいもの」はちょっと余計。「どうでもいいもの」については、それこそ書く価値も無い訳で、この本にも実際そのことはほとんど書いていないのだから。

同じ著者の他のエッセイ読んでも分かるが、「名登利寿司」は真っ当な仕事をするごく普通の町場の寿司屋。「本マグロは高くて置けない」と正直に書いてある。最高級の種を置いてある訳ではないのだが、〆たり煮たりの仕事は手を抜かず真面目にきっちりやっていることがよく分かる。ネットのシロウトグルメ評価サイトなどでは「期待して行ったのに普通でした」などとお門違いの批評が出てくるが、そもそも過大に期待するほうが本を読み間違えているという気がする。しかし、近くにこういう寿司屋があると便利だろうなあ。

このエッセイに出てくる、銀座の寿司屋でイクラ丼2杯で7万円の話が面白かった。名登利寿司の常連が知り合いに連れられてかなり遅い時間に銀座の寿司屋に行った。「もう看板です」と渋る親父に、そこの常連だという知り合いは「イクラ丼だけ食べさせてよ」と粘り、根負けした親父はイクラの小丼を2つ出す。ささっと食べて勘定頼んだら「7万円です」。この知り合いは黙って払ったという。

まあ、寿司屋で常連面して我が物顔に振舞うと、とんでもない逆襲に会うという教訓ですな。客なんだから、萎縮したり必要以上に親父のご機嫌を取る必要などない。しかし、客だから何してもよいという訳ではないのである。「なんだ安いな」と払って、それからも連日通ったら、向こうの親父も「おそれいりました」となるだろうが、そもそもこの勘定は、「もう金輪際来るなよ」というサインなのだろう。なかなか恐ろしい寿司屋もあるもんだ。もっとも、かなり名の通っていた銀座のこの店は、もう閉店したのだとか。いったい、どこだったんだろうなあ。