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2005/05/21 横浜関内、鮨「はま田」

ずっと書くのを忘れていた。横浜、関内、鮨「はま田」を、先週日曜のお昼に訪問。河岸が連休する時はお休みだが、それ以外は開店1年間無休営業を継続中。定休日をいつにするかはまだ検討中とか。寿司屋は河岸に合わせて日曜、水曜お休みなんて多いが、日曜やってもらえるとありがたいんだがな。

日曜の関内の街は閑散。だからという訳でもあるまいが、カウンタにはお客は私ひとり。週日は忙しかったそうであるが、日曜は割りと空いているかもしれない。昼間から酒飲むのはアル中の廃人だそうであるが、夜は飲む予定ないので常温で日本酒をちびちびと。

お通しは枝豆。ツマミはおまかせで。店は貸切状態。あれこれ雑談しながら一杯。浜田氏は、2月の開店後に30歳になったそうで、「30にして立つ」まさしく論語通りである。自分が30の時どうだったかを思い出すに忸怩たるものあり。まずアワビ塩蒸し。大原のマダカ。何杯か一緒に煮ないと味が出ないと。切ってもらったのは1キロ弱のなかなか立派な物。柔らかくしかも香り高く上がっている。大ぶりの肝はしっかり味がついて酒のツマミに好適。トリ貝は実に肉厚。くどくないフレッシュな甘みがよい。タコは桜煮。塩ゆでも置いたが、「青木」のやり方もどこかで残したいので、自分なりに改良した桜煮に統一したと。素材そのものの香りというより、仕事した旨みと風味が独特。もう1品、何か炙りましょうかと平貝を。お酒2本を空けた頃合に、「そろそろ握りましょうか」と絶妙のタイミングで声がかかる。一生懸命仕込んだ種を、本当に握りたそうな感じの浜田親方の笑顔が印象的。

白身はマコカレイ。軽い脂がいかにも初夏。マグロはやや小型だが、旨みも香りもある。酢飯によく合う赤身、中トロ、大トロと。スミイカ。すでにアオリを使う店ばかりだが、握りにはスミイカのほうが合うので、まだこだわりたいとのこと。酢飯と一緒に崩れるパキパキ感はやはりスミイカの独壇場。探せばあるもんだな。アジは鹿児島。脂は確かに素晴らしく乗っているのだが、決してくどい脂ではなく品のよい旨みがある。毎日あちこちの産地を試して試行錯誤していると。カスゴはふんわりと軽い〆。白身のもつ自然の甘みが口中で溶けるようで秀逸。コハダは1匹丸づけ程度の小型。〆が軽く脂が薄いように思えるが、これは好みの問題か。

海老は天然の車。茹でてすぐ供するのではなく、事前に茹でて味を落ち着かせる方式に変更。確かに茹でたてをそのまま食すると、甘みや旨み、風味があまりにもくどく感じる事がある。酢飯にはこのほうが確かに合う。ミル貝、赤貝も結構。そして小柱も軍艦で。シャコは薄い味の漬け込み。実に立派な身でふっくらした旨みが素晴らしい。どこか「與兵衛」の仕事にも似ている。アナゴは炙らずに。脂が乗ってふっくらと。赤ウニは、脂よりも旨みが勝る上質なもの。アワビを握りでも1貫。先日つかさでも食べたが、酢飯と一緒に食べても美味いもんだと再認識。最後に玉子を握りで。くどい甘みはないが、柔らかいスフレのようで、どちらかというと女性向きかもしれない。

酢飯については、前回よりもやや酢も塩も丸くなった気がしたが、これは温度も前回より少し暖かめに調整されていたからか。いずれにせよスッキリして種によく合っている。あれこれ試行錯誤しているのだが本日くらいがちょうどよいとのこと。木の櫃と藁櫃の組み合わせは、保温に関しては手がかかると思うが保温ジャーは米粒がくだけるので使いたくないとの話であった。お茶を飲みつつ握りをつまんで、親方や奥さんとあれこれ雑談。だんだんと常連のお客さんも増えて、夜には結構接待のお客もいるのだとか。種も回転して結構な話である。

河岸の仕入先についてもあれこれ研究している。確かに修行店とまったく同じところから買わなければならない理由など別にないものなあ。雇われで親方が買ってくる品物をただ仕込むだけの時はあんまり試食もできなかったが、自分の店になると、仕入先、魚の産地、ほどこす仕事、いくらでも研究して考えることがあるようだ。タコ、アワビ、海老などの仕事にしても更に研究が続いている。魚の選別にしても、「これでもかとばかりクドいほどの脂や甘みがある系」から少々離れ、寿司種としての上品なバランスを取って種をラインアップしようとしているかのように伺える。きちんと修行した仕事熱心で真面目な親方であり、まだまだ研鑽と進歩は続くだろう。それもまた好ましいところ。適当なところで勘定を。親方も奥さんも、相変わらず丁寧で明るく気持ちよい接客。場所が離れてるのでそれほど頻繁には通えないが、また立ち寄りたい店である。