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2003/02/03 冬の金沢。「千取寿司」

1月はなんだかんだ忙しかった。先週末は、久々にのんびりした週末。冬の日本海に、海の幸を求めて金沢まで。

羽田からの便は定刻の出発。空から見ると日本海側に広がる一面の雲。白山山頂だけがポッカリと雲間から見える。小松空港からバスで金沢まで。空から見ると凪いで見えた海も、地上から見ると、結構波高し。曇天模様だったが、金沢市街に入ると急に雪がちらついてきた。しかし、雪に煙る金沢も風情あり。

ホテルにチェックイン後、雪も降ってるし外出せずグータラ。夕方になって、予約してあった「千取寿司」にタクシーで向かう。カウンタにはまだお客さんは誰もいないのだが、職人は忙しく立ち働いている。奥の座敷で宴会があるのか、急ぎの出前でもやってるのだろうか。

お酒は福正宗、山田錦大吟醸を冷やで。この酒を出している「福光屋」という蔵は、千取がある石引のお隣さんで、自分の店の銘柄代わりに使っていると前回訪問時に聞いた。突き出しのイカ塩辛で最初の一杯。なかなか爽やかな飲み口。寿司食う時には、美味くてもあんまり重たい酒も困るから、これくらいがちょうどいいか。

ツマミをおまかせで所望。左利きの職人は、前にも相手してくれた年季の入ったタイプ。まずは白身を、ヒラメ、アラと切ってくる。ヒラメはあっさりしてるがなかなか美味い。アラはツマミより、むしろ酢飯と一緒に握ったほうが美味いような気がした。次に甘エビ。ねっとりとして甘い。

香箱カニが三杯酢で出てくる。香箱カニは珍重されるズワイのメスで、冬の北陸の名物。福井ではセイコカニとも称する。茹でたカニの足の身と外子を全て丁寧に外し、胴体を開けた上にきれいに並べて乗せてあり、カニ肉と味噌と内子が箸だけで手を汚さずに食べられるという、実に丁寧な仕事。

小さな胴体の殻中には、カニ味噌とオレンジ色の内子がぎっしり。この内子が最高に美味い。淡白で甘い身と、濃厚なミソと、芳醇な内子を、美味い日本酒飲みつつ。これぞ冬の日本海の至福だ。香箱はもう禁漁期だとネットで見たのだが、店の話では、禁漁でない港もまだあると、なんだか不可解な説明。まあ、食えれば文句ないわけであるが。はは。

キス昆布〆の後に、バイ貝が出て、そして寒ブリ。赤味がかった切り身に、ダイコンおろしと一味唐辛子を添えて。しかし脂の乗りはもうひとつという気がした。本当の旬は12月だという。ちょっと遅かったか。ヤリイカにコノワタの塩辛。コノワタの塩辛というのは、感動していくらでも食べられるようないわゆる「美味」ではないが、酒に合う、「オツな」味なんだなあ。

ノドグロの塩焼は、以前、夏に食べた時よりも脂が乗り、かつ上品な風味。ツマミの最後は、ホタテ貝柱の炙り焼き。

お酒も回ったし、このへんで握りに移行。お茶が美味い。トロ炙りは2貫。1貫は塩で、もう1貫は醤油で、なかなか立派なマグロだ。このあとは1貫づつ、ヒラメ、キンパチダイ、イクラ、サバ。最後に玉子。玉子は関西風の出し巻。これはこれで結構。

普段、東京では食べない寿司種を頼んだが、これはこれで楽しいもんだ。最後のイワシつみれ汁は相変わらず秀逸。ただ、寿司種には、前回ほどこれは、という感動がなかった。まあ、ここ数日、ずっと北陸は雪で海が荒れていたらしいから、確かに条件は悪かった。客をもてなす態度は実に気持ちのよい店である。

勘定の時に、私の分厚いジャケットを見て店の女性が「重装備だね」と笑う。「いい街寿司紀行」でシャリ炊いてる写真にも出てた、この店のおかみさんであった。