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2002/05/12 寿司日記 勝どき「さゝ木」

今朝更新した時は、日本の政治の無策を悲憤慷慨してたので、すっかり昨日の夜のことを書き忘れていたのであった。追加で更新。

昨日の夜は、勝どきの寿司屋、「さゝ木」。たまには新規の店を開拓するかと、電話で予約。高級江戸前寿司の有名店であるが、最近は私もあちこちの店に行ってるので、「すし経験値」が上がってきて、たいていの店なら臆することなく入って行けるようになった。RPGで、レベルが上がると、知らないダンジョンに入るのも怖くなくなるようなもんだ。ははは。

水を撒いた店の入り口には高級感漂う。中はじゅうたん敷き。椅子は赤いビロード。「あら輝」もそうだが、赤いビロードの椅子に高級感を感じる層というのは、確実に存在するのだろう。私は、ちっともそう思わないが。

5時の開店直後に入ると、まだ客は誰もいない。TVや雑誌でよく見る、白髪をオールバックになでつけた親方の目の前の席を示されて、そこに座る。

玉の光純米を冷で飲みながら、まずツマミ。突出しは、白魚を軽く茹でたものをポン酢で。白身で何かと所望すると、スズキとイサキを切ってきた。あっさりした淡白な白身である。イサキを食べたのは初めて。シーズンを問うと、本来はもう少し後だが、今年は出るのが早いのだという。親方は一見ぶっきらぼうでイカツイ感じだが、寿司種や昔の東京の話になると、語りが生き生きとして、なかなか話好きなことが分かる。

今年は、桜も早かったが、海も暖かい。コハダも、すでに産卵して脂が抜けてスカスカとのこと。新子も7月前には出てくるかもしれない。自家製カラスミを薄切ダイコンに挟んで。軽く炙ってるのだが、これが絶品。なんでも10月に一括して作って冷凍しておくのだとか。魚卵は、上手く保存すると持つからなあ。

ツマミは、続いて、船橋産のアオヤギ。昔は腐るほど貝が取れた浦安やら船橋だが、埋め立て工事でほとんど全滅。しかし、江戸前伝統のアオヤギは努力の甲斐あって復活。今年から結構取れてるのだという。「来年も続いたら、本物なんですがね」と親方。

淡い脂のアジ、軽く湯通ししたトリ貝、アオリイカのゲソとツマミを切ってもらう。土曜日は店がずいぶんと空いている。平日は、月並みな銀座を嫌う接待客も結構来るのだが、勝どきという場所柄では、土曜日はフリの客がサッパリなんだとか。親方はバブル全盛の頃を懐かしむ。

その昔、景気のいい頃には、この寿司屋があるプラザ勝どきの高層にある一室を、某ゼネコンが接待用に借りており、東京湾花火の時なんぞは、30万円ポンと前金でくれて、なんでもいいから持って来いと豪勢な出前があったのだとか。豪勢に接待で金使って、領収書なんぞいらないと豪語した株屋もいたらしい。

「ああいう景気のいい人達はどこに行ったんでしょうなあ」、と親方。まあ、リストラで首になってるでしょうな。はははは。

酒も切り上げて握りに。中トロは、さすがにいいものを使っている。ねっとりとした脂とコクが絶品。カスゴにキス。どれも江戸前の仕事だが、淡い〆かたに春を感じる。アオリイカも、しっかりした歯ごたえに甘味も十分。ハマグリもごく淡い漬込み。アナゴもあっさりとしているが、なかなか美味し。最後にカンピョウ巻きで〆。白身を入れた吸い物が出てきたが、すっきりした塩味が舌を洗って、なかなか美味い。

ということで、寿司のほうは結構だったのだが、問題は勘定で、これがバブルの頃からあんまり安くなってないような水準である。福沢諭吉2名と夏目漱石1名が、ゾロゾロと財布から出て行かれる。果たして、裏を返す価値があるかどうか、ちょっと悩むところだな。う〜む。