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2002/03/04 寿司日記 新進気鋭、上野毛「あら輝」

日曜の夜は、新進気鋭の寿司屋、「あら輝」に。東急大井町線上野毛駅から徒歩で20分。閑静な住宅地の中に店はある。

日本一と言われた銀座の寿司屋、「きよ田」を描いた「ひかない魚」という本に、ここの親方のことが書かれている。自分の働いてる寿司店が休みの月曜日だけ、頼み込んで「きよ田」に修行に来た、熱心な「荒木」君というのがが、ここの親方のことなんだそうだ。

清潔感にあふれた全て白木のカウンタは実に見事。寿司職人の技をお客の前で存分にみせる舞台のようだ。ジュウタン敷きのゆったりした造作。個人的には、赤いビロードの椅子はあんまり好きではないが、店の造りは大変おちつく。

ガラスのケースもないし種札もないので、基本的に「すべて店側におまかせ」のスタイル。親方は体育会系のスキンヘッドだが、実に礼儀正しく、愛想もよい明るい性格。仕事も熱心で、1人で12名の客を相手。お茶出しの女性がいるものの、まさに獅子奮迅の働きといっていい。

普通の寿司屋なら1時間半を目処に回転させるが、この店では、2時間半を目処にしてるとは親方の弁。たったひとりでお客をさばくので、寿司がポンポン出てこないという事情もあるのだが。

静岡の酒、志太泉(しだいずみ)を頼む。この酒は、黒龍を作ってた杜氏が移籍して作ってる酒だとか。芯が通った酒だが、淡麗で飲みやすい。ひとりだけど乾杯。携帯の電源は入れてあったのだが、着信しなかったとは翌日になって言われるまで知らなかった。残念。

まず、ツマミをおまかせで。すべて丁寧に産地を説明しながら供される。全部覚えてる訳ではないのだが、印象に残ったものだけ記録しておこう。

まず、九州唐津のアワビ塩蒸し。殻ごと塩蒸しにしたアワビは小粒だが、旨み十分。ただ、やや塩気が強いか。一緒に出されたアワビ肝もオツな味。

千葉のヒラメ。先のアワビと同様、築地を通さずに現地から送ってもらってるのだとか。季節的にはもう終わりで、全盛期に比べると脂もやや枯れてきた感があるが、なかなか美味し。ヒラメの皮を炙ったのも、ポン酢で。箸休めにちょうどよい。

アジを軽く炙って塩で。アジの干物みたいだが、生でも食える寿司種を炙るのだから、実に美味なり。

赤貝。その後で煮イカ。小さな子持ちを茹でて。これも実に美味い。玉子焼きをつまんだ後にコハダ。これもどちらかというと淡い〆だが、なかなか結構。

お酒3本飲んだところで握りに切り替え。これもすべておまかせ。マグロ以外は1貫づつ、煮切りを塗って供される。

まず赤身X2。これは萩の「釣り」で上がった270キロの本マグロだとか。見てくれはイマイチだが、マグロのコクのある旨み十分。

ウニは、そのまま握りにして、手渡ししてくれる。北方領土で採れたウニなんだそうだが、これまたネットリとして、実に美味い。

アナゴは、いったん白煮にしたものを炙った後でツメをつけて。香ばしく、これも美味い。しかし、個人的には、小笹寿しの生地焼きのほうが好きだな。

カスゴはオボロを挟んで。ちょっと皮目を炙ってるような気がした。またマグロに戻って、中トロX2。これも、脂が乗って大変に美味い。

サヨリが出て一通り。最後にカンピョウ巻きを頼んで終わり。寿司の素材はすべて素晴らしい。親方の仕事も実に丁寧で、店の居心地もよい。これで勘定は1万3千円。銀座小笹なら2万円近く取られる内容である。親方がひとりで頑張って、よいものを安く提供しているわけで、なかなか感心した。

改善を要する点というと、客あしらいが遅いことか。店に入ってから出るまで2時間半。まあ、ゆったり食事ができるといえばその通りだが、自分の好きなものをポンポン頼んでサッと帰るといった使い方には不向きかも。弟子がひとりでもいると、かなり変わってくるような気がするのだが。

ホロ酔い加減で帰宅。実によい店なんだが、頻繁に通うには、上野毛は遠いよなあ。