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1997/08/02 「博士の異常な愛情」

昨夜は、日記をアップした後、ずっと昔読んだコリン・ウイルソンを再読していたらハマってしまい、結局寝たのは三時頃。ライアル・ワトソンが育ちのよさそうでナイーブな、でもウソっぱち野郎なのに比べれば、貧困のなかで、大英図書館に通い詰めて独学した彼のほうが、何というか、迫力がさすがにあって飽きさせない。でも、ダウジングやサイコメトリーを信じるなんて、やはりどこかが間違っているんじゃないだろうか。う〜ん。

さすがに朝は目がさめない。起床後、クリーニング屋にシャツを取りに行ったり、洗濯等の雑用。よく駐在員同士で休日にゴルフに行く時なんて、妻子持ちに独身は時間があっていいなあ、なんて言われるが、これは大きな誤解だ。奥さんがいて、子どもの面倒をあまり見てない男性が、思うに多分世の中で一番暇だろう。でも、掃除も洗濯も食事も家のこまごました用事も、すべて奥さんまかせで、下着のありかも分からないし、自炊もできない、なんてネアンデルタールは、あまりうらやましいとは思わないなあ。

全体にひとり暮らしで、たいして家計の規模は大きくないとはいうものの、洗剤やトイレットペーパー、歯磨きや調味料などなどの家計消耗品や、自炊もするので、買い物の手間も結構かかる。しかし、変に感心するのは、こっちの電球。例えば洗面所なんかは、ボール型の電球が鏡の上に5つならんでいるのだが、実に計ったように古い順にひとつずつ切れてゆく。何個も予備は買ってあるけれど、どうも日本の電球より持ちが悪いような気がして、交換が面倒でしょうがない。部屋のあちこちに立ててある、ポール型の間接照明のハロゲンランプも実に規則的に、あっちが切れれば、こんどはこっちと切れる。技術の粋をつくして、保証時間までは持つが、絶対にある時間以上長持ちしないようにしてあるに違いない(笑)。

ごたごた用事を片づけて、外出、タワーレコードとサンコーストでセルビデオを見てまわる。旧作や過去の名作が、結構新装発売されているので、時折チェックするのが習慣になった。「博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」は日本では深夜TVの吹き替え版で見たきりだったが、ビデオ版を見つけて15ドルで購入。さっそく帰って見てみると、ピーター・セラーズのひとり3役には圧巻。しゃべり方から風貌まで、まったく別の人物にしか見えない。白黒ながらキューブリックの画面はこのころから美しく、非常に凝り性なところが見て取れる。

映画の基本的なトーンが、冷戦下のキューバ危機を目の当たりにした観客の心をつかんだのか、興行的にも大当たり。そして、この余勢を駆って、キューブリックは大作「2001」の制作に入って行く。無知で粗野な指導者に指揮された命令には絶対服従の硬直した軍隊組織、彼らを影で操って最終戦争をけしかける狂人科学者、そしてそれを止めようのない無力な政治家、と言うキューブリックが戯画した終末的世界は、今でも十分説得力があるところが恐い。軍人(とは言え将軍ではなくその秘書役)、狂人科学者、大統領の3役をすべてピーター・セラーズが演じわけるのあが、この人は名優だった。もうずいぶん前に亡くなったんだよなあ、確か。

キューブリックは大好きな監督だけど、他に持ってるビデオは、2001、フルメタル・ジャケット、時計仕掛けのオレンジ、シャイニング、バリー・リンドン。だいたい15ドルから20ドル以下。もともと寡作な監督なので、1964年以降の映画はこれで全部のはずだけど、「博士の異常な愛情」以前の映画は探してもセルビデオではなかなかお目にかかれない。まあ、この映画でメジャーになったらしいので、あとは丹念にケーブルTVのEncoreなんかでチェックするしかないのかな。