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2007/04/05 「主人公は僕だった」 / 「ロッキー・ザ・ファイナル」 / 「デジャブ」 

日本往復の機内で見た映画について、一部書き忘れてたので追加。

「Stranger Than Fiction」

映画にあるナレーションというのは、考えてみると不思議なもので、映画の登場人物には聞こえず、映画の観客にだけ場面の状況を説明する、いわば「神の声」である。この映画の着想が面白いのは、このナレーションが映画内の主人公にも聞こえているということ。この声の正体を探るうち、彼は、自分自身がある作家の書きかけの本の主人公であり、聞こえてくる声はこの作家の書きかけの本の記述、そして作家はそのラストを彼の死で締めくくろうとしていることに気づく。

文章で書くと面倒なシチュエーションだが、映画は冒頭から、一種SFのような、あるいはミステリーのような、独特のシュールな緊張感をたたえ、淡々したタッチで進行する。ところどころに挿入される不条理劇のようなシークェンスも面白い効果あり。主演のWill Ferrellは、なかなか軽妙な演技で、映画にある種の明るさと落ち着きを与えている。どこかで見たと思ったら「Elf」に主演していたのであった。そもそもは「Saturday Night Live」にも出演していたコメディ畑の俳優。

真面目で堅物のIRS職員が税務調査に行ったベーカリーで、自由に生きるオーナーの女性と恋に落ちるというサブ・ストーリーも、結末の盛り上がりにうまく結びつき、効果的に成立している。脇役で出たダスティン・ホフマンも印象的。原題は、「小説より奇なり」という意味だが、日本では公開予定あるのだろうか。ネットで検索すると、「主人公は僕だった」という邦題で5月に公開予定だとか。日本語の題名はなかなか上手い。「日比谷みゆき座他」という公開館はマイナー感漂うが。なかなか面白い映画なのだが。


「Rocky Balboa」

日本では、「ロッキー・ザ・ファイナル」という題名で今月公開予定。ロッキー・シリーズの最終作。ボクサーを引退したロッキーは、愛妻エイドリアンを亡くし、イタリアン・レストランのオーナーとして、フィラデルフィアで暮らしている。しかし、胸にくすぶるボクシングへの情熱。コンピュータ・シミュレーションにより、過去の名チャンプを戦わせるというTVの企画で、現チャンピオンより全盛時のロッキーが強いということになる。怒った現チャンプがロッキーにエキシビジョンでの挑戦状を叩きつけ、ロッキーは最後のリングに上がることになるという筋書き。

ロッキーについたトレーナーは、スピードが衰え、膝の関節もスリ切れて動けないロッキーは、一発のパンチの重さを鍛えるしかないと分析して、パワーをつけるトレーニングをさせる。トレーニング・シーンはロッキー・シリーズの定番中の定番だが、やはり印象的。実物のシルヴェスター・スタローンは、1946年生まれだから、もう60歳。顔は確かに老けたが、分厚い胸板や筋肉は、とてもそんな年に思えないのが凄い。昔と比べて重量を増した体型は、ジョージ・フォアマンがカムバックしたのよう。

試合の顛末については、あえて書くまでもないだろう。定番のロッキー節。しかし、実に単純な物語だけに、心にストレートに響く力を持っているのも事実なのであった。

「デジャブ」

この映画は日本でちょうど劇場公開中。フェリーが何者かに爆破され、テロリストの関与を前提とした捜査本部が設置される。デンゼル・ワシントンがこの捜査に加わるプロローグを見て、ごく普通の犯罪捜査物だと思ったが、ストーリーはどんどん奇妙な方向に転がって行く。最終的にはSFとも呼ぶべき展開に。巨大な装置を使った捜査には、奇妙な「制約」が存在するのだが、それが物語後半を展開する鍵にもなっている。着想はなかなか面白い。

最後まで物語の軸となるヒロインが、まず最初に死体として登場するというのも、物語の核となるアイデアと密接に結びついている。死に顔がアップで延々と写された時、てっきりハル・ベリーかと思ったが、これは新人女優なんだそうで。それにしてもよく似ている。

ストーリーは、随所にわたりご都合主義的、アラもあるのだが、物語の展開にスピード感があり、あれよあれよという間にストーリーが進行。意外にボロが目立たない。大きなスクリーンで見たら、もっと面白かったかもしれない。