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2007/03/30 「ドリームガールズ」 

日本往復の機内で見た映画。

1960年代にデトロイトで生まれたモータウン・レーベルが、全米で成功してゆく過程を下敷きとして、シュープリームスをモデルにした黒人女性3人組コーラスグループの成功と挫折を描くミュージカル映画。

素人オーディション番組出身のジェニファー・ハドソンが、アカデミー助演女優賞をこの映画で獲得。彼女の役は、成功を夢見るグループの中心。素晴らしい歌唱力でリードボーカルを担当するシンガー。その才能を見出したマネージャーの懸命なプロモーションにより、グループは成功を収める。しかし彼女はリードボーカルの座を仲間に奪われ、恋にも破れ、失意に沈み、挫折してゆく。

ジェニファー・ハドソンの成功と転落がこの物語の大きな柱。荒削りながら存在感と歌唱力はさすがで、この役は彼女の爆発力により、実に印象的に成立している。アカデミー助演女優賞には異議なし。むしろ主演と称しても不思議ではないほど。ビヨンセ・ノウルズが一応主演ということになっているのだが、シナリオ上「声に魂と深みは無いが美貌を買われてリードボーカルを取る」という役柄であるから、ストーリー上の存在感そのものが最初からちょっと薄く、損をしている印象あり。

では、ビヨンセがハドソンの役やればアカデミー賞が獲れたか。そもそもこの映画が焦点を当てているのは、モータウン・ミュージックが従来の泥臭いR&B、黒人音楽の枠を脱し、人種を超えて受け入れられるポップスとしての成功を収める過程であり、美貌のビヨンセからファンキーなハドソンにリードボーカルが交代すると、話が無茶苦茶になってしまうのであった。

しかし、シュープリームスを嚆矢として、コケティッシュなセクシー系黒人女性3人組というのは、いまやポップスの中に橋頭堡として確立した黒人系音楽であって、最初にこのプロモーションを考えた人はなかなか戦略家であった。映画ではジェイミー・フォックスが演じている。もっとも、それは本当の我々の音楽ではないと感じる側もあり、そちらを代表する役が、エディ・マーフィーとジェニファー・ハドソン。マーフィーも、シンガーの栄光の絶頂と転落を描いて、実に印象的な好演。

そして、ミュージカルだから当たり前だが、なにしろ全員歌が上手いのには感心。音楽も素晴らしい。ただ、急に演技をストップして歌いだすのだけはどうにかならないか。それがなければミュージカル映画じゃないと言われればその通りだが、慣れないとやはり違和感がある。

機内では音声は英語、中国版字幕あり。ところで、題名「ドリームガールズ」の中国訳は、「夢幻女郎」なのである。妙なことにムヤミに感心した。