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2006/01/03 小津安二郎を続けて 

部屋でグータラしていると、TVも大して見るべきものなし。「小津安二郎DVDボックス 第一集」から、「彼岸花」と、「秋日和」を連続で。

どちらも小津監督晩年のカラー作品。娘の結婚を巡って起こる出来事や家族の情愛を描き、軽妙で上品な喜劇に仕上がっている。舞台は昭和30年代の東京。貧しさから脱して高度成長路線を走り始めた日本。暮らし向きも楽になってきて、娘や息子がそろそろ結婚適齢期に差し掛かった家庭。ゴルフ場、中華料理屋、寿司屋など当時の風俗をしのばせるショットも数多く、興味深い。

娘が勝手に結婚相手を決めたというので腹を立て、式には出ないと言い出す「彼岸花」の佐分利信は、封建的な家長の権威というものが次第に失われ始めた当時の世相をも体現して、印象深い好演。ゴルフ場のバーなどでは、佐分利信がウエイトレスに「おい君、ビールだ」などと頼むのだが、いかにも昔のオッサンという横柄さで、妙な味がある。どちらの作品でも旧友役で出演しているのが中村伸朗。後年の田宮二郎版「白い巨塔」、東都大学船尾教授と浪速大学東教授でも同じコンビで出演していたのを思い出した。

「彼岸花」の山本富士子の軽妙な関西弁での演技、「秋日和」での岡田茉莉子のシャキシャキした下町娘の直情径行でコミカルな演技など、どちらも達者だが、やはり小津監督の演出の妙が光るというべきか。どちらも小品であるが見飽きない。小津安二郎DVD−BOXなるものは第4集まで出ているようだが値段が高い。しかし次々購入してしまいそうで怖いな。