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2005/03/15 「遊星からの物体X(The Thing)」

「恐怖の詩学 ジョン・カーペンター/人間は悪魔にも聖人にもなるんだ」(ジル・ブーランジェ/フィルムアート社)を先月に読んでから、やはり「遊星からの物体X(The Thing)」を見たくなったのであった。

アメリカから持ち帰ったVHSビデオがどこかにあったはずと探したのだが見つからない。しかたなしにAmazonでDVDを注文。キャンペーン中で2,090円。メイキングなどの特典映像も入ってるからなかなかお買い得。ただ、もう1枚他のDVDを購入しなければ割引にならないのだが。

真っ白な南極の雪原。逃げる犬を撃ち殺そうと、ノルウェー南極観測隊のヘリコプターが追いかけてくるという一種異様なシチュエーション。冒頭から映画は観客をその世界に引きずり込んで行く。

南極の氷に埋まった異星の宇宙船。その近くから何かを掘り出した痕跡。隊員が全て死に絶えたノルウェー観測隊の基地と、そこで見つかった人間とも怪物ともつかない異様な「何か」。そして、その「何か」が甦り、アメリカ基地の隊員に次々と憑依し、その姿を変えてゆく。氷に閉ざされた基地内で、誰が人間で、誰が怪物に憑依されているのか分からないという、恐ろしい疑惑の極限状態。

原作は、ジョン・キャンベル・ジュニアのSF小説『影が行く』。ずいぶん昔に読んだことがあるが、映画は原作にかなり忠実に作られている。原題である「Who goes there!」は、暗闇に怪しいものが通り過ぎた時の典型的な誰何の文句。この映画のラストは虚無的で救いがなく暗い。映画館で見た時の絶望感はいまでも思い出せるようだ。しかし、だからこそ印象に残る。B級とはいえ、カーペンター渾身の傑作だ。