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2005/02/08 「マイク・タイソンDVDボックス」

「マイク・タイソンDVDボックス」。土曜日にTVCMで見て、早速Amazonで注文したら翌日に届いた。実に早いデリバリー。早速1枚目のDVDを見る。ESPNで放送したドキュメンタリーからの映像をまとめたもの。

ヘビー級チャンピオン・ベルトを獲得した1986年のトレバー・バービック戦。ヘビー級タイトルを統一したボーンクラッシャー・スミス、トニー・タッカー戦。そして戦慄すべきKOを奪ったラリー・ホームズ戦、マイケル・スピンクス戦。どれもダイジェスト映像だが、当時リアルタイムで見ただけに実に懐かしい。この頃のタイソンは正真正銘の世界最強であった。

窃盗で少年院に入った黒人少年が、名伯楽カス・ダマトにそのボクシングの才能を見出される。そしてダマトの養子になり、お前は必ずヘビー級のチャンピオンになると励まされつつ、有能なトレーナー、ケヴィン・ルーニーにボクシングの技術を厳しく叩き込まれる。そこから始まったサクセス・ストーリー。

しかし、世界チャンピオンになると、ボクシングしか知らない世間知らずの男が持った巨額の金を目当てに、怪しげな連中が殺到してくる。金をむしられるだけに終わった性悪な女性との最初の結婚。いつの間にかプロモーターとして契約に入り込んできて搾取するドン・キング。ケビン・ルーニーも解任された。マネジャーも彼の元を去る。最強のチャンプ、マイク・タイソンの転落は意外に早く訪れる。

3団体を統一するチャンピオンとなってから3年後、日本での試合でジェームス・ダグラスにKO負け。ダマトとルーニーが作り上げたボクシング・マシーンはすでにあちこちが壊れていた。

女と酒を巡る幾多のトラブル。暴行容疑での刑務所暮らし。その後、復活し一旦はチャンピオンに返り咲くも、裁判所やら刑務所と縁が切れることはなかった。ホリフィールドとの再戦で耳に噛み付いて失格。その後は復活を図るも2戦続いてKO負け。おそらくタイソンのキャリアはこれで終わりとなることだろう。

ボクシング・ヘビー級チャンピオンは世界で最も強く、最も金を稼ぐ男。しかし、上り詰めた場所が高いほど転落の落差と陥穽は深く大きい。今もまだ現役を続けているのは、かつては世界一素晴らしいボクサーだったマイク・タイソンの魂無き残骸である。

現実生活ではすでに栄光を失ったタイソンだが、このDVDに残されているのは全盛期の素晴らしい彼のボクシング。素早い動きで頭を左右に振ってパンチを避ける。グローブを歯でかみ締めているかのような高いガード。出会い頭のパンチも少々貰うが、ダメージが蓄積していないから、ほとんど影響がない。そして電光のように放たれるフック、アッパー。

下半身は右足を引いた右利きスタイルだが、パンチそのものは左右区別の無い両利き。上半身は右肩を後ろに引かず、相手に真正面から正対する。そして凄まじい強さで左から右から次々に繰り出されるパンチ。まさにボクシング・サイボーグ。

このDVDには、そんな世界一強い男だった時期と同時に、タイソンがチャンピオンになる前の映像も収録されている。カス・ダマトはタイソンが天下を取るのを見ずに死去した。その葬儀でのタイソンには、途方にくれた少年の表情がよぎる。鳩を飼うのが好きだったシャイな少年は、いまや顔にまでタトゥーを入れた引退寸前、手負いの獣。ボクサーの末路は時としてむごい。