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2004/09/13 M・ナイト・シャマランの「ヴィレッジ」

日曜の午後、「ヴィレッジ」を見た。公開2日目であるが意外に空いている。監督、M・ナイト・シャマランのデビュー作「シックス・センス」は、よく練られた脚本、冴えた演出、鮮やかなラストのどんでん返しと、監督デビュー作としては実に印象的な映画であった。デビューが鮮烈であったため、それ以降の作品がどうしても見劣りして見えるのは否めない。

2作目「アンブレイカブル」は、作品の出来としては第1作には及ばないものの、一応、シャマランが単なる一発屋ではなかったことは十分に証明した。しかし3作目の「サイン」は、後半がちょっと唖然とするような展開でガックリ。興行としては当たったのだそうで、世の中分からんもんである。

シャマランの作品は、どれもいわゆる「ホラー」というより「Thriller」の範疇か。謎に満ちたストーリー展開、卓越した演出力、映画的に「物語を語る」力によって観客を映画に引き込む力が優れている。

もっとも、「シックス・センス」のどんでん返しが鮮やかであったがために、常に派手な「オチ」を期待されるのは本人にとって気の毒な点。ネットでの評価を見ても、シャマラン作品には、「半分見たところでオチが分かった」、「いや、俺はもっと前に分かった」などオチばかり考えて見ている観客が多い。しかし余談ながらこういう映画の見方もつまらない話で、早くオチが分かるのが偉いなら、「映画を見なくてもオチが分かった」人間が一番偉いということになろう。それでは映画を見る必要がない。



周りを取り囲む森によって文明や他の町からまったく隔絶したペンシルバニアの村が舞台。森には「語ってはいけない」恐ろしい何かがおり、村の人間は森に立ち入らないという暗黙の掟がある。しかし村に起こった事件によって、とある女性がこの森を通り抜けて「町」に行く決意を固める。

いかにもアメリカ東部という、この森の不気味さは、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を思い出す。森の中の「語ってはいけないもの」の姿には、アメリカン・インディアンのドリーム・キャッチャーを思い出した。プレデターみたいなのを想定してた人はガッカリだろうが、あれはあれで妙に不気味で成立している。

俳優は、ヒット作を出してる監督だからこそ使える実に豪華な布陣。エイドリアン・ブロディは実によい。アイヴィー役の新人女優も存在感があり素晴らしい演技。しかし、わざわざ、ウィリアム・ハートとシガニー・ウィーバーまで脇役で出さずとも十分成立する映画ではあった。ホアキン・フェニックスは「サイン」の役がまたそのまま出てきたかのよう。

映画の結末は、寸前まで刻々と盛り上げた恐怖に比べればややカタルシスに欠ける。しかし「サイン」よりもずっとマシ。結末寸前まで引っ張ってゆく演出の力がこの映画の見所と言えるだろうか。「世間から隔絶せざるを得なかった村」の悲劇やそれを生み出す狂気までサイド・ストーリーとして描きこむと映画に深みは増しただろうが、上映時間はこの程度で正解と思える。

「シックス・センス」ほどのどんでん返しを期待して見に行くとつまらないかもしれないが、普通のスリラーとして見ると十分に楽しめる。「サイン」よりもずっと面白かった。