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2003/09/23 DVD「ボウリング・フォー・コロンバイン」

DVDで「ボウリング・フォー・コロンバイン」を見た。フィルムへの感想は過去日記の5月1日にも書いたのと変わらない。実に面白いドキュメンタリー。

特典映像でついているムーア監督へのインタビューも興味深い。生まれ故郷、ミシガンの町フリント。1968年4月4日、当時13歳のムーア少年が親に連れられて出席していた聖木曜日のミサ。式が終わり、外へ出た一人が車のラジオを聞き、「キング牧師が撃たれたぞ!」と叫ぶと、集まった白人ばかりの信者たちは大歓声を上げた。人が殺されてなぜ歓声を上げるのか。ムーア少年の衝撃と大人たちへの怒りは深かった。「こんな国には住みたくない」、「いつかこの国を変えたい」という思いこそが、今でも映画を撮らせるのだとインタビューで監督自身が語っている。

本編もDVDでじっくり見直すと、また、あれこれ新たな発見がある。数多くのインタビューで、唾棄されるべき暴力カルト・ロッカーと評されたマリリン・マンソンの話が一番知的でマトモに聞こえるのも不思議だ。アメリカ社会を「Campaign of fear and consumption」だらけと看破し、恐怖を抱かせて物を買わせるのがアメリカ経済の本質だと語る彼の意見は、この映画の根底に流れる主張のトーンとまったく同じである。

犯罪者のチェイスと逮捕を扱った全米人気番組「Cops」元製作者の、妙に疲れたそして何かを警戒するような表情と受け答え。ムーア監督に問い詰められたチャールトン・ヘストンの顔に走る怯え。このドキュメンタリーには、見返すにたる興味深いものがあれこれ映りこんでいる。

なんでもかんでもアメリカが素晴らしいわけではない。日本よりずっと暗く深い闇がアメリカにはあるだろう。そう、本当のアメリカは、多分、キング牧師の暗殺に内心で喝采を上げたような連中が牛耳っているのかもしれない。しかし、あなたは、先日のニュースで、スピーチするラムズフェルドを「人殺し!」となじった若い女性達を見ただろうか。そして、ブッシュに「恥を知れ」と語ったムーア監督のアカデミー賞受賞のスピーチを。

マイケル・ムーアは、「アメリカはもっとよくなれる」とインタビューで語っている。彼の社会批判の奥にあるのは、実はほとんどナイーヴなほどの一種のオプティミズム。それもまたアメリカ。しかし、それこそが日本に真似できないアメリカのよき部分というか。したり顔で語る(実はカッコつけてるだけで無責任な)久米宏の正義より、ずっとマトモな言論がアメリカにはある。なんだか、そういう気がするドキュメンタリーなのであった。