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2002/03/18 「シャドウ・オブ・バンパイヤ」

DVDで、「シャドウ・オブ・バンパイヤ(Shadow of the Vampire)」を見た。

「吸血鬼ノスフェラトゥ」はドイツの名監督、フリードリッヒ・ムルナウ監督が1922年に製作した無声映画。そもそもは、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」の映画化であったが、原作者の未亡人が映画化の許可を出さず、題名と設定を変更した世界初の吸血鬼映画であった。

この「シャドウ・オブ・バンパイヤ」は、「ノスフェラトゥ」に吸血鬼役で主演し、オルロック伯爵を演じた俳優マックス・シュレックが、実はホンモノの吸血鬼であり、この映画はある意味ドキュメンタリーであったという奇想天外なストーリー。一種のホラーファンタジーというか。

ま、どうでもいい余談だが、英語の題名をそのままカタカナにしてるのに、いったい何の理由があって「the」を抜くのだろうか。ま、映画の題名ではよくあることなのだが、ちょっと映画の宣伝部の見識を疑うな。

実は本物の吸血鬼だったという設定のマックス・シュレックを演じるのは、ウィリアム・デフォー。映画が完成したら、主演女優を好きにしていいと吸血鬼と契約し、本物の吸血鬼を主演に使う、狂人と言うべき映画監督を、これまた濃ゆい、ジョン・マルコヴィッチが演じている。

オリジナルの無声映画、「ノスフェラトゥ」を再現した白黒の画面と、本来のカラー画面が交錯する不思議な雰囲気を持った映画だ。

東部ヨーロッパで400年を生き延びた怪物を主演男優として、吸血鬼の映画を撮る監督も、これまた映画という芸術にとりつかれた怪物であり、すべてをフィルムに捕らようとする、その奇妙にねじくれた情熱は、最終的には吸血鬼をすら滅ぼしてしまうという怪異な結末を迎える。

監督役のジョン・マルコヴィッチも、たいへんな怪演であるが、ウィレム・デフォーも、「吸血鬼を演じている本物の吸血鬼」という複雑な役を見事に演じきっている。

デフォーは、「キリストの最後の誘惑」で、イエス・キリストを演じているのだが、キリストとバンパイアの両方を演じたことがある俳優というのも、なかなかいないだろう。本人の俳優としての演技の幅を証明するような事実である。大作ではないが、名優2人の熱演で、なかなか奇妙な雰囲気を持った面白い映画に仕上がっている。

プロデューサーのニコラス・ケイジとあるのは同姓同名かと思ったら、ホントにあのサル顔俳優のニコラス・ケイジなのであった。最近はプロデューサー業にも進出しているらしい。知らなかったなあ。