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2001/05/29 「麻雀放浪記」

昨日の夜は、帰宅して、「麻雀放浪記」を見る。黒澤明や小津などの巨匠を別とすれば、日本映画で見て感心したのは、この映画と「蒲田行進曲」だけだ。監督はイラストレーターが本業の和田誠。映画好きのアマチュアが作った映画第1作というのは、映画に対する知識と情熱を総動員して、意外に佳作が多いものであるが、この映画も大変よくできている。

敗戦直後の焼け跡と化した東京を舞台に、バクチの魅力に取り付かれたアウトロー達が織り成す過酷な勝負の世界。ギャンブラーとしても名高い、阿佐田哲也が原作。

キャスティングが見事にツボにはまっている。老ギャンブラー、出目徳の高品格は、実に渋い演技。ヒロポン打つところなんぞは、実際に昔やってたんだろうなあ、と思わせる。ははは。吉原の人買い、女衒の達を演じた加藤健一は、虚無的なニヒルさを漂わせながらも、悪人になりきれない人間味を見せるという、なかなか存在感のある演技。

上州虎の名古屋章、ドサ健の鹿賀丈史も、それぞれにハマリ役だし、大竹しのぶも加賀まりこも出てるという豪華キャスト。しかし、残念ながら主役ともいえる真田広之は、ただ若いだけが取り柄という風にしか見えない。もっとも、原作でも、阿佐田哲也自身が投影されていると見える「坊や哲」という主人公は、バクチを巡る修羅場を紹介してゆく一種の狂言マワシであって、若いだけが取り柄の主人公と言えばその通り。

私自身は、麻雀やらないのだが、ルールを知らなくとも映画のストーリーを追うのには何の不都合もない。修羅場をくぐり、血肉をしのぎあいながら、賭博の魔力に取りつかれ、あり金無くし、命までも亡くしながらも、最後までパイを握り続けるギャンブラーの生きざまは、ちょっと鬼気迫るものがある。

死んだ出目徳を、住まいのバラックまで運んでやり、身ぐるみ剥いから土手下に転がして別れを告げるのも、お互い破局のギリギリまで追い詰められながらの血みどろの勝負をした者同士にしか共有できない、残酷で、そして奇妙で気まぐれな友情の証である。