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2001/02/13 「アンブレイカブル」を見た。 

昨日の夜は、「アンブレイカブル」を見た。近所のシネマコンで、夜7時からの上映だが、観客は30名足らず。ま、あんまり混まないよう、倒産しないよう、細く長くやってもらいたいな。<こっちの勝手な都合。

監督のM・ナイト・シャラマンは、自ら映画のワンシーンに出演したり、サミュエル・L・ジャクソンが地下鉄入り口に立つシーンを、前作「シックス・センス」そっくりに撮ったり、監督2作目にしてすでにオールド・マスターの風格あり。丹念な撮影は、相変わらずあれこれと凝ったアイデアに満ちている。

サミュエル・L・ジャクソンは、骨が次々折れるという奇病に苦しむコミックブック・フリーク。世界のどこかに惨めな自分とは正反対の、まったく怪我も病気もしない、不死身のスーパー・ヒーロー(アンブレイカブル)がいるはずと狂信するにいたった男を独特の迫力で演じている。

荒唐無稽な設定ではあるが、テンポよく最後までなかなか飽きさせないストーリー運び。ただ、途中から、この映画がいったいどういう風に終わるのかが、心配になってくる。まさか、「シックス・センス」と同じオチじゃないだろうなあ、なんて。

ブルース・ウィリスが映画の中で見せる力は、一種のサイコメトリーだろうか。時計や写真や人物に触れて、人や物に残留した、過去あるいは未来の記憶を読み取る超能力。ラストシーンは、スティーヴン・キングの「デッド・ゾーン」を思い出す。

サイコ・サスペンスともスーパー・ネイチャーなファンタジーとも取れる不思議なストーリーは、終盤に至って、ブルース・ウィリスが実際に"Unbreakable"な存在であったという事実を明らかにしてゆく。

しかし、主人公が生きるのは、コミックブックの世界ではなく、”Can I come in?  Can I come in?  I Like your house.”と、ウスラ笑いを浮かべて家に押し入って来る、狂った殺人者が横行する現実のフィラデルフィアである。たとえ不死身のヒーローが現実に現れ、正義を行おうとしても、彼もまた、結局のところ殺人者になるざるをえない。

サミュエル演ずるイライジャが"Too many sacrifices just to find you!"と叫ぶラストは、病的な文明社会に倦んで、魂の救済を求める(しかし残念ながら狂った)男の声であるが、観客の胸に去来するのは、"But、It's all wasted"(しかし、すべては無駄なことであった)という嘆息である。たとえ、主人公がアンブレイカブルな存在であっても、この世はおそらく何も変わらない。そういう意味では、実に印象的なラストだが、たいへんに救いのない、暗い結末ではある。

第1作目が当たって華々しく登場するればするほど、第2作でそれを超えるのは難しい。この映画が「シックス・センス」を超えたかと言われれば、もちろん超えていない。並んでもいないが、ナイト・シャラマンは、少なくとも自分が「シックス・センス」だけの一発屋ではないことは証明した。その点で一見の価値がある。そんな気がする映画だった。