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2000/11/06 「スペース カウボーイ」

昨日の夜は、ブラっと銀座に出て、「スペース カウボーイ」を見た。先週の週刊文春のコラムでは、「年に映画を1本しか見ないのならこれだ」と小林信彦が推奨していたが、客席は案外にガラガラ。

「ザ・ライト・スタッフ」でトム・ウルフが描いた伝説のテスト・パイロット、チャック・イェーガー。彼がジェット戦闘機で初めて音速の壁を破る場面を彷彿とさせるようなモノクロの回想シーンから映画は始まる。

ロケットに操縦席だけがオマケでついたかのような軍事用のテスト機。とてつもない出力を振り絞って、天空遥かに上昇し、成層圏を突き抜けると、一瞬だけ体験できるのは、太陽と星が真っ暗な天空に輝く、ほとんど宇宙空間と言っても過言ではない世界。

1950年代のジェミニ計画で、宇宙飛行士(アストロノーツ)の候補者になったのは、大部分が、テスト飛行で遥かなる宇宙を垣間見た経験のある軍のテスト・パイロット達だった。

そういう時代に、宇宙に行くチャンスを奪われた4人の男達は、それぞれに引退し、老年を迎えている。それでもなお夢を捨て切れなかったこのオジイ達に、ひょんなことから宇宙に行く重要な任務が与えられた、というのがこの映画のストーリー。

実際のジェミニ計画やアポロ計画の宇宙飛行士達も、すでに60〜70歳だが、自らも渋いジイサマになったクリント・イーストウッドが監督・主演。

イーストウッドの永遠のライバルを演じるトミー・リー・ジョーンズは、実際にはイーストウッドよりずっと若いはずだが、たいへんに渋い演技でよろしい。ドナルド・サザーランドも年を取ったが、艶のある軽妙な役柄を実にうまくこなしている。監督兼任のイーストウッドが偉いのは、自分の周りに演技巧者を配してちゃんと出番を作り、決して「オレがオレが」に陥っていないところである。

宇宙に行くまでの前半は特にテンポが快調で、連発されるジョークがなかなか笑える。後半の宇宙の場面では、凶悪な姿で宇宙空間に屹立するロシアの通信衛星を始めとして、SFXがよくできている。光と影が特にリアルだ。

年寄りだらけの「チーム・ダイダロス」を冷やかして、USAトゥデイに「The Ripe Stuff(オヤジの資質)」と出る場面も印象的だが、「ザ・ライト・スタッフ(The Right Stuff) 」を読んで、初期のアメリカ宇宙開発史やエピソードを頭に入れていると、面白さは倍増かも。

ジェミニで宇宙に行ったジョン・グレン上院議員が、60歳を超えて再びスペース・シャトルに乗る国だからこそ、荒唐無稽な映画のストーリーにも説得力があると言えるだろうか。

「Good Old American Dream」 そういうものが昔はあった。いや、ひょっとして、それは今でもあるのかもしれない。そんな気にさせる、なかなか珍しい映画である。「Man 0n the Moon」が合い言葉であった、ケネディ時代のアメリカに愛着がある人だったら、ちょっと泣ける。