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2000/06/03 「 ミッション・トゥ・マーズ」

昨日の夜は、「ミッション・トゥ・マーズ」を見た。ブライアン・デ・パルマ監督にしては珍しいSF映画。

特殊効果というと必ず出てくるILMのSFXがあちこちに出てくるとあっては、デ・パルマ流の華麗なキャメラワークも活躍の場が縮小するが、亡き妻との回想シーンに出てくる、めまぐるしく場面が交錯するビデオ撮影などは、お馴染みの偏執的キャメラワークのヘンリンあり。この監督は、こういうシーンが実に好きだ。

無重力下での宇宙船内や宇宙遊泳の撮影というと、どの映画もキューブリックの「2001」と比較されるのが気の毒なような気がするが、遠心力によって人工重力をおこした宇宙船内を巡るショットは、キューブリックの「2001」を更に進化させたようなたいへんに流麗で圧巻の映像。撮影機材の進歩もあるだろうが、感心した。

ただ、無重力下でのダンス・シーンなんてのは、さすがのデ・パルマでも、台に乗ってクルクル回ってるとしか思えないショットでちょっと苦しい。あるいはあれは、「ボディ・ダブル」で自分が撮ったシーンをパロディにしたのか。まさか、そういうこともないだろうなあ。

ま、もともと地球上で無重力状態を模して撮影するというのは、誰が取ってもちょっと無理があるんだよなあ、すべてをCGで作るとかしないと。逆に考えると、「2001」のキューブリックが偉かったのは、撮れそうにないものをあえて撮らない選択であったと思える。

映画自体は、ちょっと古臭い気がするほど、かなりまっとうでストレートなSF映画である。火星を回る軌道上を自由落下してゆくクルーがREMに乗り移る場面では、ちょっとアシモフの短編を思い出した。

真空無重力下(あるいは自由落下状態でもいいが)での加速度による物体の動きというのは、思考実験として昔のSF作家の興味を捕らえたとみえて、こういうのを題材にした短編ってのは何度も読んだことがある。その他にも、古いSF小説を思い出す場面が多々あり、デ・パルマ自身も古くからのSF好きだったことがうかがえる。

ストーリー全体としては、なかなかよくできていると思うが、クラークの「前哨」やらキューブリックの「2001」やらスピルバーグの「未知との遭遇」を思い出さざるを得ない。もっとも、これは人類以外の知性との遭遇をテーマにすると、こうならざるをえないという、和歌で言う、本歌取りの範疇ではある。

デティルが、妙に真に迫っているのは、NASA探索機の写真に写っていた火星の人面岩や、南極の永久凍土から見つかった古い隕石から生命の痕跡が見つかったなど、実際にあった話題をうまくストーリーに織り込んでいるからだろうか。

ただ、その後の現実として、NASAの人面岩は、より詳細な写真を見ると、とても人面には見えない小さな砂山であったことが判明したのは、なんとなく残念だ。本当に火星の上で、ピラミッドや遥か古代の人工の遺跡なんかが発見されたら、人類の歴史を塗りかえる大変な騒動になるだろうに。


余談ながら、映画館について言うと、ちょっと混んでそうだったので指定席にしたのだが、運悪くちょうど前の席に2名着席。男のほうは、とうてい映画なんぞ見るように思えない、知性のヒトカケラもないようなサル顔をした60過ぎと思しいオッサン。

女のほうは、これまたガラの悪そうな、私鉄沿線の最終駅の、これまた場末のほうで人気ないカラオケバーのママやってるかのような太った50カラミのオバハンである。しかし、このご両人は、どういうわけかやたら座高が高く、画面を見るのがたいへんに難儀であった。

で、オッサンのほうは途中で退屈そうで、太った場末のバーのママ(←勝手に決めつけ)に話しかけたり、ベタベタしたり、居眠りしたりしてやがんだよなあ。映画見る気ないなら映画館に入ってくるな〜!ボケ!