MADE IN JAPAN! 過去ログ

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1997/10/24 アメリカのレディ・ファースト

今いる事務所はビルの7Fで、当然エレベータを使う。そのたびにどうも無礼な事をしているようで、落着かない。どういう事かというと、乗り込む順番なのだが、アメリカでは当然女性が先。普通のドアを開ける時なんかも、まず男性が開けて、女性を通すのが普通。これはあんまり年齢とか会社での上下関係に影響されず、純粋ないわゆるレディ・ファースト・ルールが適用される場合のほうが多い。

しかし、日本ではこう言うルールは特にない。だいたい近くにいる人間からワラワラ乗り込むけど、一番奇異に感じるのは、時折、ドアを押さえて男性にお先にどうぞ、と合図する女性がいる事。普通のアメリカ人の男性がこれを見たら、びっくりするね、きっと。普通、公共の場で、女性が男性に道を譲るなんて考えられないから。こういう態度は、アメリカ人の男性を非常に落着かない気分にするだろうが、反対に日本女性に対する度はずれた妄想をかきたてられる奴もきっと出てくるでしょう。

もっともアメリカ人を観察していると、ホテルやオフィスビルでも、ドアが開くとたんに女性が当然のように入ってゆくわけでは、かならずしもなく、男性が目で合図したり、「after you」と声をかけたり、手まねでどうぞ、と指し示した一瞬後に、「Thank you」と女性が微笑んで、ためらいなくスッと入って行く。実に自然です。こういうところが文化の違いで、日本でどうぞお先にと、手を差し出しているオフィスの制服姿の女性に、いやいやそちらがどうぞ、と譲るとかえってぎくしゃくする。そういう時は、むこうを困らせてもしょうがないので、自分が先に入ったり。<だんだん日本に再適応しているぞ(笑)

誤解してもらっては困るのだけど、私は本当は別にフェミニストと言う訳ではありません(笑)。ただ、アメリカで暮らした時に、ルールを知らない振る舞いをして、背中の後ろで、「この無礼なジャップが」と(聞こえはしませんが)舌打ちされるのが嫌で、(そしてそれは、日本から来た出張者なんかが、単なる無知のせいで、本当によくやらかすのだけれども)そういう事を防ごうと、ちょっとだけ努力した事と、日本に帰って来て、ああ、もうそんな事はやらなくていいのかな、と少しだけ安堵した事を語っているだけなんですけどね。<別に安堵して元の木阿弥に戻るな、との声も聞こえるような気もするけど、日本ではそのほうが楽だからなあ。

アメリカでは、ヨーロッパより女性優先が公共のマナーになってるのは、昔の開拓時代に女性が少なくて、むやみに大事にした風潮が残ってるなんて話もきいた事があるなあ。以前、ウーマン・リブ以前の古き良き(かどうか知らんけど)アメリカで青春を送った女性が書いたアメリカ文化紹介の本で、「私はデートの時には、自分では注文しません。今の若い人は、もう違うと思うけど。私の青春時代には、相手の男性に、自分の食べたい物を伝えて、彼に注文してもらうの。もう古いかしら。でも、私は今でもそうするのが好き」と書いてありましたね。時代により色々なアメリカあり(笑)。


そう言えば、以前うちの西海岸で働いていたアメリカ人のセールスマン達と飲みにいった時、彼が今の奥さんとのなれそめを語るには、

「初めてバーで会ったときにもうぞっこんになって話しかけたんだ」

「彼女は、私、こういう所にくるの初めてなの。何か飲み物を注文して下さるって言ったんだぜ」

「それで、こんなウブな娘がまだいるんだなんて思ってさあ」

なんてデレデレ話すと、他のアメリカ人が、

「俺の嫁サンも初めてバーで会った時、同じ事を言ったぞ」