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2003/02/27 壮大な実験。マイケル・ジャクソン。

録画しておいた、「マイケル・ジャクソンの真実 」を見た。インタビュアーは、イギリスのマーティン・バシェアーというジャーナリスト。歌の上手い黒人の子供が、厳しい父親に小さな頃から芸を仕込まれる。兄弟と一緒にTVに出て人気者になった彼の望みは、「白人に、そしてピーターパンに」なること。

普通の人生なら、この夢は少年の日の白日夢。誰しも現実との折り合いを、いつかどこかで見つけなければいけない。しかし彼は、夢を捨てる前にポップスの世界で信じられないほどの大成功をおさめる。

小さな頃から、嫌というほど見聞きし、体験した汚い大人の世界。幼少期のトラウマ。父親からの虐待。少年のまま成長が止まった人間が、現実との折り合いがつかないまま生きる。そして、夢と現実の狭間で、使い切れないほどの巨万の富を得るとどうなるか。

それは壮大な実験。マイケル・ジャクソン。彼のせいではないのだけれど。

曲が売れまくった全盛期、80年代の所得は、一日2億円と聞いたことがある。10万ドルの壷をポンポン買うのも異常に見えるが、所得に比例すれば、何ほどのこともない。市井の人が千円のモノを買う感覚だろう。

本当に痛々しいのは、マイケル・ジャクソンの質問への答え方や日常の会話が、実に稚拙で内容もなく、ちゃんとした大人に感じられないこと。嫌な質問をされると、「Why you do this to me」と顔を覆って嗚咽するマイケルジャクソンは、精神的には幼児のままである。インタビューが核心に迫ってないというより、そもそも、マイケルの精神的成長がずいぶん前に止ってるのではないか。

高くなった鼻、白くなり続ける肌。自分の精子を使い(と本人は言うのだが)人工授精で授かったという子供は、しかし、どうみても白人だ。

「Please make me a real (white) boy」

「ピノキオ」と「A.I.」、そして自分の歌「スリラー」をごちゃ混ぜにしたような人生を彼は生きている。

しかし、巨万の富を得て自分だけのために「ネバーランド」を建設しても、本当のピーターパンには決してなれない。いくら金があっても、なんだか実に気の毒な人生だ。もしも、私が信仰を持っていたら、私はきっと彼の幸せのために祈るだろう。