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1999/08/22 「大顔展」と国立科学博物館 

眼がさめるとすでにお昼だった。別に昨日は飲んでないのだが、ちょっと夜更かししたのだった。週末はゴロゴロして過ごす予定だったが、やっぱり退屈だ。3時近くになってちょっと出かける。

ふらっと上野に出て、国立科学博物館へ。 「大顔展」なるものを見る。「だいかおてん」と読むらしい。国立科学博物館に来るのは、ずいぶん久しぶりだ。いつのまにか新館なるものが出来て、地下3階へと立派なエスカレーターが出来ている。

こういう物には、税金を投入して建ててるのだろうか。あるいは入館料収入でまかなってるのか。科学の振興に役立ってるのか、あんまり効果がないのか、どうも評価のしようがないなあ。もっとも、建物が綺麗になっても、どこで何を展示してるかさっぱり分からないのは以前の通り。

週刊誌では、本物の顔の解剖標本が展示してあると書いてあったが、実際に見てみると、ホルマリン漬けのそれは、色も褪せて、ブヨブヨに膨らんで、どうにも現実感がない。そうか、皮膚の下はこうなってるのか、と思いはするが、ホラー映画に出てくる皮はいだ人面なんてののほうがずっとリアルに感じる。もっとも、本物の顔の皮膚の下なんて見たことないから、リアルに感じるというほうがおかしいような気もするけど。

夏休みで子供連れで大混雑してたせいもあるが、「大顔展」そのものは、あんまり大したことはなかった。南信坊の顔がやたらあちこちに出てたが、本人が企画に参加してるのだろうか。常設展示の恐竜コーナーも新館地下でずいぶんと立派になっている。ティラノサウルスなんて、前からこんなに立派な複製があったっけ。爬虫類と恐竜とを明らかに区別する、股関節の違いなる説明を興味深く読む。ふむ。

ついでに本館の天文学のコーナーなんぞをブラブラ。ここで隕石を見ていると、いつもコリン・ウィルソンが書いていた話を思い出す。物体に触れると、その物に「封じ込められた記憶」を読み取る、「サイコメトリー」という力を持つ超能力者の話。

古代ローマの遺跡の石のかけらを入れた、封印された封筒を手に取った超能力者は、キトンを来て人々行き交う古代ローマの風景を幻視して語ってみせた。次の封筒を手にとった彼が見たのは、凍てつくような漆黒の闇と、とてつもない孤独。そして遠くかすかに光る星々。そう、封筒の中には隕石のかけらが入ってたのだ、というお話。

もしも月の石を握らせたら、地球に月が出来た由来が判明するだろうか。なかなか印象深い話だが、突き詰めて考えると、あたりまえだが、色々とおかしな気がする。「物体に封じ込められた記憶」というのは、その物体の単位の「記憶」なんだろうか。

その「記憶」が、分子レベル、あるいは原子レベルまで行くとしたら、今ここに漂ってる酸素原子にしても、その昔エジプトのクレオパトラの吐いた息に含まれてたものが流れ流れて来たことだって無いとは言えないわけで、とてつもない数の「記憶」、「記録」が存在することになる。電子や陽子レベルまで行くと、不確定性原理の壁とぶつからざるを得ないような気もするし。ま、それにしても、本当にすべての物質にまつわるその来歴が分かるとしたら、年中うるさくてしかたないだろうな。そういう能力無くてよかった。

最後に、いつも通り、フーコーの振り子を見て博物館を出る。空はちょっと曇ってきて雷も鳴りだした。どこぞのオバサンが、「雷も鳴ってるから、雨降るわよ。あんた早くしなさい」と、モタモタする旦那を叱りつけて引き立てて行った。しかし、まだ雨は降りそうにないなあ。というわけでのんびり帰宅。

そういえば、今日はGPS衛星の日付が桁あふれする日だったようだが、カーナビが動かなくなって慌ててディーラーに駆け込むそこつな人がいた程度で、大した問題は起こってないようだ。2000年の正月もこういう調子で明けてくれればいいんだが。