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1997/09/08 アメリカンドリームを支えたカモネギ

上司と昼飯を食いに行くが、目当ての店がなぜか閉まってして、しょうがないので近くのイタリアンに。上司は赤ワインを飲むというので、一緒にグラスワインを頼んだら、これがえらく大きなグラスで、少々酔っ払ってしまった。

昼飯の時にアメリカ人の事務の分掌の事を話していると、上司は、どうもアメリカ人を完全な資金の支払いの権限を持つポストには付けたがっていないようだ。例の、アメリカ大和銀行での、国債売買で大損を出した井口被告の不正以降、東京本社が色々と現地法人の支払いの権限についてうるさいからだろうか。しかし、日本人駐在員だから不正しなくて、現地採用だから不正するなんて日本の認識は本当はおかしい。そういう固定観念を持っていると、かえって、いつかは足をすくわれる事になるかもしれない。


まあ、今頃になってこんな話もなんだが、大和銀行の事件については、この井口被告(もう実刑が確定してれば被告じゃないのかな?)は、「告白」と言う本を出版している。読んだけど、もともと値動きの少ないアメリカ国債の取り引きで、なぜ何千億円もの損を出す事が可能だったかと言う肝心の点については、必ずしも明らかではない。きっとまだ報道されていない裏の事情があるに違いないのだけど、大和銀行がアメリカから撤退した今、おそらくすべての事情は闇に葬り去られるのだろう。

それにしても、この本を読む限り、どうもこの井口という人は、自分で書いているほど業務遂行能力があった人物だったとはちょっと信じにくいね。アメリカに来た動機からして、日本で大学受験にすべて失敗してブラブラしていた時に親父から勧められた、という他人まかせ。アメリカで大学卒業して、就職の時も、日本の親父から、話をしてあるから大和銀行に行ってみろ、と言われて入社したという、なんとも自分の人生を自分で切り開く力を感じさせない人物。

昔、「ライアーズ・ポーカー」と言う本に、ソロモン・ブラザーズ(アメリカの債券売買の巨大企業)での債券トレーダーの実態が書いてあったが、こういうアメリカの債券ブローカーは、MBA(経営学修士)を取得した優秀な新卒を大量に採用して社内で鍛る。同じ社内で、たとえ同僚を騙そうが、何をしようが、運用成績をあげた人間がもてはやされたった一握りの成功者となって莫大な収入を得るというキャリア・パス。ある意味では、善人は食い物にされ、悪人のみが生き残る実に生き馬の目を抜くような厳しい競争社会。アメリカン・ドリームと言うのは、日本では考えられないほどのこういう厳しい競争を前提で成り立っているので、なかなか簡単なものではない。

で、果たして、そんな社会で、なんでも他人任せの井口のような人物が、生き馬の目を抜くトレーダーに伍して債券の売買なんかをまともに出来たのかが、実に疑問な訳である。債券売買は基本的にゼロサム・ゲーム。大和銀行が何千億も損してるとしたら、笑いが止まらないほど儲けた奴がどこかにいるんじゃないだろうか。

彼の本を読むと、特定の取り次ぎ業者の相場観を、単純に信用して売ったり買ったりしていたようだ。しかし、業界内部では彼の動向はきっと筒抜けで、「ほら、またあの馬鹿ジャップが買ってるぞ」とばかり売り浴びせられ、スッテンテンになるまで敏腕で悪辣なトレーダーにムシリ取られたのでは、という疑念を抱かずにはいられない。それで大もうけをした連中は、日本から遠路はるばるネギをしょってきたカモに感謝しながら、自らのアメリカンドリームを実現させたのだ。

しかし、あそこまで金額が膨らむ前に会社に報告しておけば、解雇にはなっただろうが、刑務所にまで行く必要は無かったのだが。ある意味可哀想だ。では、私が同じ仕事をやってたらどうか。やっぱり大損してたでしょう(笑)。これは自信ある。生き馬の目を抜く世界で勝つわけない。はは。もっとも、会社への報告は、もっと前に絶対にしてますけどね。ええ、多分。おそらくは。<だんだん自信なくなってきた(笑)。