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1997/05/19 最後のクリスマス パーティー
アメリカでは、恋人同士は勿論、夫婦でも、人前でキスするのは、結構あたりまえの事で、いたるところで見かける。キスだけに限らず、一般的に、アメリカの夫婦は、日本のそれに比べて、格段に仲がいいように見えるのはどうしてだろうか。人前でも、ちゃんと愛してるよと呼びかけるのも、自然だし、直接の会話にも、やたら My sweet heart なんて挟み込む。結構、熟年の夫婦でも、手をつないで歩いているのも普通の光景だ。お客を自宅に招待したら、日本ならば、うちの田舎料理がお口にあいますかどうかなんて謙遜するだろうが、アメリカ人なら、うちのワイフのこの料理は絶品でね、と奥方に対する賛辞があるのが当然だ。

しかしまあ、すべての夫婦が、仲がよくて、幸せかというと勿論そんな事はない。離婚率を見ればわかる(笑)。日本も最近は、増えてきたらしいが、アメリカでは、結婚したカップルのおよそ半分が、おそかれ早かれ、離婚すると言う統計を見た事がある。シリコンバレーの事務所でも、私の知っているだけで、10名以上が離婚経験者だ。つまり、仲の悪いのは、さっさと離婚してしまって、幸せなのしか残っていないという事かもしれない(笑)。

日本の既婚女性にすれば、釣った魚にえさはいらない、と言わんばかりの日本の亭主にくらべれば、格段にこっちのほうが、よく見えるでしょうね。しかし、男の立場からすると、アメリカの男性は、奥さんに気をつかって、非常な努力をしており、時々は、可哀相になる時もある。こっちでは、大抵奥さんも働いているし、時には奥さんの年収のほうが、多かったりもするから、あっけなく離婚を宣言される危険性が常にある。離婚となれば、社会的対面にも疵がつくし、自分の落ち度を訴えられたならば、ハイエナのような弁護士が寄ってたかって、奥さんに全財産を取られてしまう事だってありえます。うちの会社にも、離婚して、破産したのがひとりいたなあ(笑)

日系企業に働くアメリカ人男性は、本音で話すと、大抵日本人が、うらやましいと言う。毎日遅くまで仕事をして、その後で、酒を飲みにいって、カラオケに行って(笑)、毎週ゴルフばっかりやっている。子どもの世話もしている様子がない(笑)それでいて奥さんが何も言わないなんて、夢のような話だと。俺も日本人女性と結婚したかった、なんて言う奴までいる。(いやいや、勿論、家庭第一でやっておられる駐在員も沢山いますよ。誤解のなきようお願いします)この話になると、日本人の妻帯者は、なんとも言いようのない顔をして、黙ってしまうのが通例だ。気楽に見えるけど、皆、結構、家庭内では奥さんに絞られているに違いない<コラコラ。私は独り者だから気楽なもんだけど。

確かに、アメリカには素晴らしい夫婦愛があるのも事実だ。うちの会社で働いている、あるアメリカ人の奥さんがガンに罹った時の事。もう結構なお年だったが、こちらでは必ず本人に告知するので、医者から、あと半年しか生きられないと宣告された奥さんは、その年のクリスマスに、親しかった友人・知人をたくさん自宅に招いた。奥さんはもうかなり衰弱していたそうだが、夫が抱きかかえるようにして、自宅のなかを彼女が案内して回る。

この絵は私たちが結婚した時に買ったもの。この壁は、私の一番好きな色に塗り替えたの。あそこの時計は私達の結婚記念日に子ども達が贈ってくれたのよ。これが、私の最後のクリスマスだから、大好きなみんなに私たち夫婦の、思い出の一杯つまったこの家でお会いしたかったの。夫には無理を言ったけど、皆さん楽しんでいってね。私の人生最後のクリスマス・パーティーを。そして、ひとりで残される可哀相な私の夫をこれからもよろしく。

この話は、実際に招待された、先代のうちの社長から聞いた。彼のなかでは、決して忘れる事のできないパーティーだと。人生を前向きに生きる、実にアメリカ人らしい話だ。その後やはり、その奥さんは、次の年のクリスマスを待たずに、亡くなった。

で、残された彼はどうなったかって? もう60才近いと思うんだけど、実は1年経たない内に再婚して、会社のパーティなんかでは、新しい奥さんと、手を組んだり、キスしたり、踊ったりして元気にやっています(笑)。この間なんか2ヶ月も休暇を取って、奥さんとマイアミでバカンスを楽しんでいた。いやあ、これも人生を前向きに生きる、実にアメリカ人らしい態度だなあ(笑)