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2007/04/20 Virginia Tech Shootings

日本での報道は、直後に起こった長崎市長狙撃事件に若干かすんだ面もあるようだが、Virginia Techでの銃乱射事件は、アメリカ犯罪史上最悪の大量殺人として、こちらでは連日の報道が続いている。

犯人が、朝2名を殺してからの2時間半の間に、NBCに自分の写真やらビデオメッセージを送付していたことが判明し、MSNBCがその映像を頻繁に流したのも実にショッキングな出来事。YouTubeにも大量にアップされている。犯人が正常の範囲を大きく逸脱していることは明らか。しかし、こういうものを放送するのもどうかと思うがなあ。もちろん放送の是非は論争になっている。

ビデオの中身は、拳銃を持つ犯人が、社会や金持ちに対する呪詛を述べるもの。「世界がオレを除け者にする」という典型的被害妄想が満載。MSNBCの解説者も、「me against world」的コメントであると述べていた。日本では、当初、犯人を「韓国人留学生」などとしていた一部メディアがあったが、8歳でアメリカに家族と移住し、グリーンカードを持ち、大学に通っていた犯人は「留学生」というより、「韓国系アメリカ人」と呼ぶべきだろう。

「彼はほとんど誰とも目を合わさなかった」、「笑顔を見たことがない」、「ほとんど誰ともしゃべらなかった」との報道は、それだけ聞けば、アメリカに慣れないアジア系留学生の陥った疎外感からの悲劇のように思えるのだが、実際には彼は、人種は違っても、過去でアメリカで大量殺人鬼になった白人達と同じ、典型的「少数者」「疎外者」の系譜に連なっている存在であると感じる。

社会からの疎外感が他者への攻撃に結びつくところは、アジア的メンタリティーというより、むしろ極めてアメリカナイズされた異常に思えるのだ。それは例えば、「ボウリング・フォー・コロンバイン」や、「アメリカは恐怖に踊る」に描かれたように。

犯人の家庭は貧しく、子供の頃から劣等感を感じていたとの報道もある。アジア系のアメリカ移民では、韓国系は比較的新興勢力で、経済的基盤が確立した層が多いとは言えない。私の住んでる辺りでは、クリーニング屋はほとんど韓国系であるが、いくらチャンスの国アメリカとはいえ、クリーニングの仕事だけ頑張っても、そこから掴み取る成功はたかがしれている。むしろ、彼らは自分達の子供の世代にアメリカできちんと教育を受けさせ、子供の代を成功させるために異国で頑張っているのだ。日本からそんな夢を抱いて移民してくる世代はもういない。しかし、韓国にはまだそんなハングリーさが残っている。息子がきちんと教育を受け、Virginia Techで学んでいるということは、両親には誇らしいことだったに違いない。犯行のこの日までは。

生徒に窓から逃げる時間を与えるため、自ら教室のドアを押さえ続け、最後に犯人に射殺された76歳の教授がいたとのこと。彼はルーマニア出身のユダヤ人で、第二次大戦ホロコーストの生き残りだったのだそうだ。死線を越えた経験があるからこそできた行為なのだろう。イスラエルで行われる埋葬が大きく報道されていたのにも、複雑な感銘を受けた。