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2006/07/15 「The Song of the Lark」



今まで一度も見かけたことがない絵でも、美術館をブラブラしていると、その前に、ふと立ち止まってしまう時がある。

The Art Institute of Chicagoでみかけた「The Song of the Lark」もそんな絵の1枚。Jules Adolphe Bretonというフランス画家、1884年の作品。Wikipediaにも項目が立ってるから、ま、私が知らないだけで、結構有名な画家なんだな。

フランスの農村。空高く舞い上がりながら鳴くLark(雲雀:ひばり)の声を耳にした少女が呆然と立ち尽くすさまを切り取った一枚。

地平線に見える太陽は、朝日か夕日か。朝日だとすると、この一枚は、まだ夜が明ける前から鎌を持って野に出た少女が、思いがけずLarkの歌声を聴いたところということになる。そう思ってみると、まだ少女の手も足もそれほど土で汚れてはいない。

しかし、Wikipediaの解説では、これは夕日とされている。だとすると、これは一日の労働の後で少女が雲雀の声を聞いた場面だ。そう思ってみると、少女の表情にも疲れが感じられるようにも思えてくる。絵というのは面白い。いずれにせよ、少女は裸足である。裕福な境遇では決してないだろう。

それにしても、天空に駆け上る歌声を聴く彼女の表情に表れているのは、感動とか、自然への賛歌とか、そんな風に描写できる生易しいものではないように思える。

何が彼女の胸に去来しているのかは、この絵を見る人の人生経験や、感受性、性格、またその時の心境等によって、おそらく様々に変わるだろう。これこそが正しいという正解があるわけでもない。それもまた、絵を見ることの尽きせぬ不思議である。