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2006/06/05 村上ファンドを引きずり下ろす / The Art Institute of Chicago

村上ファンドの代表、村上逮捕のニュースはネットで知った。村上ファンドは「株主の立場からの企業価値の向上」を錦の御旗にしたが、決してそれを真の目的として希求した訳ではない。「合法的総会屋」とも呼べる強引な発言で一般の耳目を集め、株価が上がると短期で売り逃げるのが仕事。もっともそれは、市場経済の元では何ら非難される筋合いのない合理的な行動だ。

ただひとつだけ、「合法的」と胸を張るためには、「インサイダー取引規制」にだけは絶対に引っかかってはいけなかった。ニッポン放送株にしても、以前から持ってた株をライブドアに推奨しようが、売ろうが自由だったはず。どうも、ライブドア出動が分かってから発表までに追加取得してるのではないか。それなら、本人が潔く認めたように完全にアウトである。どこかで何かが、やはり麻痺していたのだろう。

ファンドとしては短期の利サヤ稼ぎが目的とは言え、建前として述べた意見は、株主や市場の評価を気にしない旧態然とした経営者にとっては早急な改革を迫る不気味な短刀のようなもの。マネーゲームの副産物といえばその通りだが、その経過において企業体質の改善に資するところもあっただけに、村上世彰の失脚は、やはり残念な気もする。

ただ、最近気になるのは、東京地検特捜部の捜査というものが、「巨悪を眠らせない」というより「栄華を誇る者を引きずり下ろす」という点に力が入ってるのではないかと思われるところ。大向こうからの拍手が民衆の羨望と嫉妬から来るのなら、どうにも薄気味悪い気がするわけであるが。

日曜の午後はふと思い立って車でdowntownへ。混雑がないと中心部まで30分足らず。公園の下、壮大な地下駐車場に車を入れる。地上に出てすぐ横が、The Art Institute of Chicago。ここに来るのはそう、もう10年ぶりくらいか。



Admission12ドルを払って懐かしい内部をとりとめもなくブラブラと。

そうそう、この場所だったと思い出す懐かしい絵もたくさんある。点描の名作、スーラの"La Grande Jatte"は、記憶ではもっと大きかった気がするのだが。いや、もちろんこれでも十分に大きな絵なのだが。「ゴッホの遺言」で取り上げられた「アルルの寝室」は、その力強い筆致と、見るものを強引にその世界に引きずり込む、独特のデッサン力が素晴らしい。そして、その横には、沈潜する深い悲しみをたたえたかのような自画像。

絵画、彫刻、建築など広範囲な芸術所蔵品を誇り、ボストン、メトロポリタンと並んでアメリカ3大美術館と言われる場所。ひとつひとつ丹念に見るならば一日では回りきれないかもしれない。特に印象派の絵が有名だ。

ただ、エジプト、シュメールなど古代の美術については、アメリカの美術館は、大英博物館やルーブルに到底敵わない。ここの美術館の目玉となっている印象派の名作は、シカゴで財をなした大富豪が金にあかして収集したコレクションがそのまま寄贈されたもの。20世紀に世界でもっとも裕福な国となったアメリカならではの話であって、金で買える物については、ヨーロッパの美術館にまったく遜色がない。しかし、古代文明の英知を集めた美術品については、帝国主義・植民地支配による略奪を経た英仏には存在しても、アメリカには来ていない。ま、そこがやはり、ヨーロッパの底力というか。