MADE IN JAPAN! 過去ログ

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2006/03/15 「春が来たのに さよならね」

本日午後は、部屋に運送業者を呼んで海外引越しの見積もり。エレベータで同じ業者の海外引越し便がダンボールを積み出しているのに出くわす。箱には上海行きと書いてある。春はやはり、転勤/人事異動の季節。業者見積もりは大して時間かからず終了。海外に持ってゆくものはギリギリに絞る予定。箱詰めはすべて業者がやってくれるというのは結構な話。不用品もそろそろ処分しなければ。その他、引越し関係の準備あれこれ。

夕刻に思いがけぬメール。夜は街に出る。必然とは思わないがそれは偶然でもなかった。運命の輪は人の縁を紡いで回り続ける。心を残して日本を去るのだが、いずれ陽だまりの中で懐かしい思い出と笑える日が来るだろうか。



2日に急逝した久世光彦氏は、週刊新潮に「大遺言書」という連載を持っていた。毎回の森繁礼賛にはさすがに飽いて、愛読していたとは言えないのだが、先週の号に掲載されたのが、亡くなる直前の遺稿にして最終回。久々に目を通す。久世氏は、数年前に逝去した山本夏彦を懐かしんでこう語る。
私はここに、夏彦さんの終りの美学を見たように思った。作詞家の山口洋子さんが、<秋庭豊とアローナイツ>に書いた詞の一節に、「春が来たのに さよならね」というのがあった。たった十二文字の中に、人生の訣(わか)れの全てが隠されている。
ひょっとして彼は、迫り来る自らの死をも予見していたのではないか。そういえばエッセイの題名にも色濃く「死」が投影されている。人間の生命はおそらく、その炎が燃え尽きようとする時、その時期をそっと自らに語りかけてくれるのだ。そんなことを思わせる最後のエッセイ。春が来たのに さよならね、か。