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2005/11/15 「日本人横綱と勝負がしたい」

今月号の文藝春秋に「日本人横綱と勝負がしたい」という朝青龍へのインタビュー記事が掲載されているのだが、これが面白い。素行に問題ありとの評もあるが、根が単純で素直、直情径行、負けず嫌いの男と称するほうがより実体に近い。モンゴルでの貧しい育ちから身につけたハングリー精神や家族愛を率直に語るところにも好感が持てる。

その朝青龍は、「伝統ある日本の相撲が大好きだ。強い日本人横綱が出てきて、我々外国人力士がヒール(悪役)だというのがあるべき姿じゃないですか」と述べている。本場所では「モンゴルに帰れ」など心無いヤジが時折飛ぶそうだが、日本人としてちょっと恥ずかしい。朝青龍をヤジる前に、不甲斐ない魁皇や千代大海をヤジるべきではないのかな。

このインタビューによると、元横綱大鵬は、朝青龍によく電話をかけてアドバイスし、「頑張って7連覇しろ」と激励しているらしい。自分の大記録を抜こうとする横綱を応援する元横綱。これまた立派な態度である。昨日夜、本棚から、「巨人、大鵬、卵焼き―私の履歴書」(大鵬幸喜/日本経済新聞社)を取り出して再読。日経新聞に連載した大鵬の自伝であるが、これが何度読んでも飽きない。

「帝国ホテル厨房物語〜私の履歴書」もそうなのだが、財界人よりも、専門の世界で名を成した成功者の一代記のほうがずっと深く、魅力に満ちている気がする。

随所に、「最近の若い者は」という詠嘆が出てくるのがご愛嬌だが、そこらへんのダメオヤジではなく、不世出の大横綱、大鵬が努力の大事さを語っているのだから説得力あり。おそらく口述筆記だと思うのだが、テープを起こしたライターもなかなか編集上手で自然な語りに仕上がっている。

日本酒を5升飲んだ話。八百長疑惑から生まれた柏戸との友情。身体を大きくするために若い頃から毎日丼飯を13杯も食べたから食道が胃袋のように膨れており、引退後のダイエットは大変な苦しみだったこと。36歳の若さで脳梗塞に倒れ、長いリハビリと還暦土俵入り。実に波乱万丈、伝統の大相撲の不思議な世界を垣間見せるエピソード満載。スポーツマンの伝記としても白眉の出来だ。

大相撲九州場所は、朝青龍が本日も順当に勝利して3連勝。日本人力士がパっとしないのは残念なことだが、ここまできたら、年間6場所完全制覇と前人未到の7場所連続優勝を達成してほしい。今場所の成績次第では6場所制になってからの年間最多勝の過去最高も塗り替えるとか。いやはや凄いもんですな。