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2003/11/30 「クチコ」と菊姫 / 「生命38億年スペシャル”人間とは何だIV ”脳の奇跡」

昨日の夜は、菊姫山廃純米酒を飲みつつ、頂いた「クチコ」を軽く炙って。ナマコの卵巣だけを干した珍味であるが、海から磯臭さと生臭さを取り去って、その滋味だけを凝縮したような味がする。菊姫の芳醇さと実によく合う。

文筆家、吉田健一は「舌鼓ところどころ」の中でクチコの味を、「ぽくぽくした口当たりが何かに似ているので考えているうちに胡桃だと思い当たった」と書いている。上質なものは生臭さが確かにまったく無い。芳醇な旨みだけが残っている。中野坂上の寿司屋でもたまに出るのだが、昨日食したもののほうが美味かった。一杯やった後は、水菜、春菊、キノコと豚肉の鍋を。

TVで、「生命38億年スペシャル”人間とは何だIV ”脳の奇跡…失われた愛を探す感動の旅」を見た。題名が長いな。

「レインマン」でダスティ・ホフマンが演じたような症例は、自閉症の中で特殊な能力を発揮する「サバン症候群」と呼ばれるらしい。特定の日の曜日を一瞬にして答える「人間カレンダー」、卓越した計算能力、一度聞いただけのメロディを完璧に再現する能力。「レインマン」では、箱からこぼれ落ちたマッチか何かの本数を一瞬にして数える(というよりそのまま把握する)能力なんかが描かれていた。

普通の人間の記憶というのはあんまり厳密ではない。全体としての印象の固まりで覚えているというか。いわゆる「パターン認識」であるが、サバン症候群の人達は、すべての入力をそのまま丸ごと覚えているかのようだ。完璧なる記憶が逆に、人間らしい感情や知性の発露に問題となることもあるだろう。人間の記憶能力の不思議。

自閉症の患者すべてがサバンではないし、特殊な記憶能力があっても全体的な知性そのものは低い例が多いようだ。頭を強打して後天的に「人間カレンダー」になった男性というのも興味深い。やはり器質的な障害でもあるのか。そういう能力が実在することは事実として、なぜそうなるのか、脳の能力や記憶の不思議にはまだまだ知られざる部分が残っている。ノーベル化学賞を受賞した利根川教授は、残りの研究生活を脳と記憶の謎の解明にあてると語っていたが、研究は進んでいるのだろうか。

父親に虐待され、12歳までずっと自室に幽閉され、社会と隔絶して過ごした「少女ジーニー」も実に悲惨な話だった。言語能力も感情を制御するすべもそして知性も、能力を獲得すべきだった幼少期の空白に失ったものがあまりにも大きい。「謎のカスパール・ハウザー」という種村季弘の本を思い出した。

アマゾンの原住民と暮らす話は、本筋とほとんど関係なく浮いてる気がしたが、何か脳と関係あったのだろうか。「ジャングルに住む人は素朴ですなあ」、とそれだけの話では。コメンテーターの養老孟司も、いてもいなくても変わらない印象。死体の解剖の話なら大得意だろうが、生きてる脳の話はもっぱら専門外だろう。はは。