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2003/01/03 助六由縁江戸桜

グータラしてたら、お正月も、もう3日。風邪気味なのか、体調はあんまりよろしくないのだった。

昨日の夜は、NHKで、新春大歌舞伎「助六由縁江戸桜」の中継を見る。歌舞伎というのも、今でこそ人間国宝がヨロヨロと出てくる古典芸能であるが、そもそも出雲の阿国が川原で始めたのは、一種のストリップショーのようなものであったと言われているし、関東に根付いてからも、風紀を乱すと何度も禁止令が出ているように、江戸の民衆が熱狂する、下世話な歌謡ショーのようなものであったらしい。

「助六」は、歌舞伎の中でも有名な登場人物で、大江戸一のスーパースター。遊郭で一番人気の花魁、揚巻の情人であるモテモテの色男。しかし、またの名を曽我五郎といい、実は、源氏の宝刀友切丸を見つけ出すため、わざと放蕩をくりかえし、遊郭で刀を持った男に次から次へと喧嘩を吹っかけているのだったという筋書き。

この助六が花道から登場するときに、延々と踊って何度も何度も見栄を切る。助六は、当代一の人気役者がやる歌舞伎でも有名な役。「どうだ、おれはカッコいいだろう」とばかり、延々と役者が客席に自分をデモンストレーションする場面だ。ま、このへんが、歌舞伎のそもそも持つ下世話な魅力を今に残すところだろうか。

筋書きとしても、江戸の庶民は、助六が侍を次々とコケにする場面を見て、多いに溜飲を下げたに違いない。まあ、ジャニーズ系のコンサートと吉本新喜劇を合わせたような芸能だったんだなあ。

助六のセリフも、江戸っ子のタンカの原型のようなのがたくさん出てくる。「口ン中に屋形船を蹴りこんでやる」、とか、「テメエのような安い野郎の名前なんぞ知るものか」とか、聞いててなかなか面白い。

そういえば、池辺良のエッセイに、息子の嫁さんに、DHAやらEPAが豊富で健康によいからと、魚のアラや目玉ばかり食わされて、「オレは台所のチリ箱じゃねえんだ!」と怒るジイサマが出てくるが、こういうのも典型的な江戸っ子の悪たれである。こういうレトリックは、歌舞伎と共に保存されてたんだなということが、なかなか面白い。