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2002/12/11 力石の死 

このところ、「ジョー&飛雄馬」なんていうマンガ雑誌に凝って、毎号買っている。月2回発刊なのだが、その昔、少年マガジンに連載されて一世を風靡した、「あしたのジョー」と「巨人の星」をセットにして、ちょっとずつリバイバル掲載してゆくもの。1冊で2本読めて得した気分である。ははは。

今回の「あしたのジョー」は、ジョーと力石の運命の対決、そして力石の死を描いた有名な回。ストーリーは知ってたが、実際にマンガを読んだのはこれが初めて。ほとんど死に直面する苛酷な減量を経て、小柄なジョーのクラスにまで体重を落とし、宿命の死闘に挑む力石。力石は、ジョーから壮絶なダウンを奪い、試合には勝つが、試合中から起こっていた脳内出血で、試合直後に倒れ、そのまま死亡する。限界を超えた減量が、彼の体をボロボロにしていた。このへんの描写は恐ろしいくらい圧巻。

やせさらばえた餓鬼のような肉体、悪鬼のような形相で、自らの宿命にからめとられ、死の陥穽へと吸いこまれていった力石の死。2つ前の号から延々と続いた、狂気の1歩手前にいる力石の減量シーンも凄まじかった。そして、敗北の後、握手を求めるジョーに答えようとして、そのままリングに倒れ、永遠に失われるライバル。「彼は燃え尽きて死んだのだ」という白木会長の言葉は、矢吹丈が「真っ白に燃え尽きる」、有名な作品のラストへとつながってゆくのだ。

「あしたのジョー」連載中、マガジンを発売日に買いそびれた三島由紀夫が、深夜に出版社を訪問して1冊売ってくれと頼みこんだというエピソードがある。力石の死を描いた号が発売された時は、社会的な大反響が、確か新聞記事にもなった。「なぜ力石を殺した」というファンの声が出版社に殺到したそうだが、力石の死は、ある意味必然であったのだろう。語られた物語は、時として語る者の意図をも超えて展開してゆくことがある。

ライバルの壮絶な宿命の死は、矢吹丈に青春の光と闇を深く刻み込み、「あしたのジョー」を歴史に残る名作にした。梶原一騎の原作に力もあるが、やはり、ちばてつやの描写力が凄い。

もっとも、「あしたのジョー」のマンガを雑誌で読んだ記憶はないなあ。私は、もっぱら「巨人の星」をアニメで見てたほうである。TV番組の「巨人の星」は、左門豊作の貧乏談と弟妹の苦労を延々と描いて、気がついたら、星飛雄馬が甲子園でまだ1球も投げてないのに30分が終わっていたという、今にしては超スローな物語運びであったが、これまた懐かしい。