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2000/11/26 シャフトのリメイク / 気の毒な宇宙飛行士

そろそろ11月も終盤だし、引越しの準備にもとりかかったほうがいいのだが、まだ何もやる気にならない。困ったもんだ。

昨日は基本的にずっとグータラしてたが、午後から秋葉原に出て、DVDの新作などをチェック。ずいぶん古いアメリカ映画で、黒人刑事物の、「黒いジャガー」というのが発売されているが、この原題が「シャフト」。ちょうど今、劇場公開しているサミュエル・L・ジャクソンの新作は、これのリメイクということか。

帰宅した後、Webで調べると、ジャクソンは、旧作で黒人刑事シャフトを演じたリチャード・ラウンドツリーの甥らしい。叔父と甥で新旧2作に出演というのも珍しい。ちゃんとタイミング合わせて旧作をDVD化する日本の映画会社も抜け目ないが。ただ、リメイクであれば、今回の題名も「黒いジャガー」にしたほうが分かりやすかったと思うが。もっとも購入はしなかった。黒人刑事物といえば、やはり「夜の大捜査線」シドニー・ポワティエですな。<古いよ。

ずっと前に見た「ザ・ライト・スタッフ」が2千円になってたので購入。先日「スペース・カウボーイ」の感想を書いた時に触れたが、これは、アメリカ宇宙開発のごく初期の段階をノンフィクションで描いて全米ベストセラーになったトム・ウルフの同名の本を映画化したもの。

カリフォルニアの砂漠にあるエドワーズ空軍基地で、連日大酒を飲んで無茶をしてはテスト飛行に望み、次々と死んで行く荒くれの空軍テストパイロット達。軍の安い給料で危険な飛行に命をかける男達は、自分が誰よりも優秀なパイロットだと信じ、限界に挑戦することと、大空を自由に飛ぶことが好きだった。

思うがままに機体を操って、時速1000キロ以上で垂直に近い上昇や急旋回を自在に繰り返す。そのカタルシスは、鳥になったという生易しいものではなく、ほとんど神になったかのような高揚感があるに違いない。そう考えると、車なんて、いくら速いF-1に乗っても、所詮2次元の世界だものなあ。正しき資質を持ち、選ばれたものだけに許される、誰よりも高く、誰よりも速く、天空を自在に飛ぶ資格。テストパイロットは自恃心が強く高慢で扱いづらい人種ぞろいというのも分かる気がする。

オリジナル・セブンと呼ばれるマーキュリー計画の飛行士は、主として軍のテスト・パイロットから選ばれたが、宇宙を飛んだ後は、まるでロックスターのように有名になり、名声と富を手にいれる。カリフォルニアの砂漠で、安月給で自由に大空を飛んでいた無名のパイロット達が、その自由と引き換えに宇宙船のカプセルに押し込められ、単なる荷物として宇宙を飛んだだけで有名になる皮肉。X-1と呼ばれるテスト機で世界で初めて音速の壁を破り、史上最高のテスト・パイロットと呼ばれたチャック・イェーガーは、アストロノーツには志願せず、自由に空を飛ぶことを選んだ。

もっとも、マーキュリー計画に選ばれた宇宙飛行士が全員幸せだったわけではない。ちょっと哀れなのはガス・グリソムだろうか。アメリカ人としてジェパードに次いで2人目の弾道飛行に成功したが、着水後、回収ヘリがカプセルにケーブルをつける前に突然脱出ハッチが爆発。海水がカプセル内に侵入し、吊り下げが間に合わず、カプセルはデータを積んで海の底に沈んでしまった。

パニックに襲われてヘマをやったのだと囁かれたが、真相はどうあれ、ミッションに失敗した飛行士と評判を落とした。この映画でも、その汚名を返上するために、「オレは絶対に月に行く」と宣言する場面が出てくるが、ジェミニ計画でも更に1度の宇宙飛行に成功。アポロ計画では、アポロ1号の船長になる予定だったが、訓練中の操縦船の火災で他の2名のクルーと共に焼死。空軍のテストパイロットとしては大変に優秀だったそうだが、なんとも気の毒な最後である。