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1999/06/13 「危ない飛行機が今日も飛んでいる」

今日は午後早くに一度日記を更新して、その後は、部屋の片付けをするはずだったのだが、いったいなんでまた、本日2回目の日記を更新してるかというと…。そう、結局のところ、「また明日やればいいや」という現実逃避が始まって、さっきまで本を読んでたのだった。あかんがな。しかし、引越しまであと5日か。

で、読了したのは、先日買った、「危ない飛行機が今日も飛んでいる(上・下巻)」(メアリー・スキアヴォ著・草思社)。これがなかなか面白かったので、内容を記録しておこうということで書いてるわけですな。日曜の夜にご苦労というか、馬鹿者だ。はは。

アメリカにいる時は年間10万キロ近くは飛行機で移動してたけど、日本に帰ってからは極端に移動距離が減った。私自身が飛行機事故に遭遇する確率は格段に減って喜ばしいのだけど、それにしても、飛行機というのは、ちょっとした故障が即墜落の危険に結びつくのだからやはり危険には違いない。

この本は、アメリカ運輸省の元監察総監であった著者のメアリー・スキアヴォ(名前から分かる通り女性)が、アメリカの航空行政を司る連邦航空局(FAA)がいかに業界と癒着して怠惰な仕事ぶりであるかを暴き、どの飛行機が安全か、どこの航空会社が安全か、どのようにして飛行機事故に遭うリスクを減らすか、の実践的知恵について述べた本で、アメリカでは「Flying blind、Flying safe」の題名で発行されたものの邦訳。上下2巻だが、下巻だけでも十分面白いし、お金を節約したいならむしろ下巻だけ買えばいいかもしれないな。


で、肝心のどの飛行機が安全か、だが、著者によると、当然ながら古い飛行機は危ない。航空機の経済的耐久性はおよそ20年と言われているそうだが、20年以上使われている飛行機はたくさんある。古いモデルとしては、DC−9、DCー10、そしてB−727、およびロッキードL−1011。これらは飛行機の機齢自体が古く、乗るべきではないとしている。

B−737はアメリカ国内でもっとも使われている機体だが、方向舵に問題があるのではと言われており、古いモデルはできたら避けたほうがいい。(しかし、737は、UAのシカゴーサンノゼ間で毎月のように乗ってたんだよなあ)

いわゆるジャンボジェット、747についても、古いモデルの故障率は平均を上回っており、747-100、747-200は避けるべきだとしている。(先日の出張時に乗ったUAは747-400だったな、そういえば)

アメリカ東海岸からヨーロッパに飛び立ったTWA800便が離陸後に洋上で大爆発を起こした事故は、当初はテロの可能性も取り沙汰されたものの、結局、原因は解明されていない。しかし、この旧型ジャンボは、設計ミスにより中央燃料タンクが爆発を起こした可能性があるのだという。ボーイングは、新型の747については、燃料タンク付近に熱遮蔽板を設置する設計変更をしており、TWAは、事故の後、旧型747をすべて別機種に変更した。


しかし、航空機好きならすぐに機種が分かるだろうが、普通の人は、飛行機に乗ってから、座席前方の「安全のしおり」を見て初めて自分の乗った機種が分かる程度であって、その時点で機種が判明しても、もう遅いんだよなあ。

アメリカの場合だと、出張の多い人が必ず持っているOAG(オフィシャルエアラインガイド)には、その便の使用機種が明記してあるのでまあそれが参考になる。が、古い機体かどうかは確認できないので、一般的には、やはり大手で機体への投資がきちんと行われている会社を選ぶのが安全ということになるだろうか。

それでは航空会社はどこが安全か。いわゆるリージョナルエア、コミュター航空と呼ばれる、限定した地域を飛ぶ比較的小さな航空会社は、大手の中古機を購入しているケースが多く、所有飛行機の平均年齢が非常に高い。危ないわけだ。また、機体整備の予算も満足でない場合も多く、きちんとした整備ができてないケースが多い。

FAAの統計で、10万飛行当たりの事故率を見ると、確かに弱小エアラインの事故率は大手の2倍にもなっている。だからアメリカ国内で飛行機に乗る時は、安全面だけを優先するなら、接続が多少不便でも、なるべく大手エアラインを選ぶのが鉄則だ。

しかし、実は大手でも事故率が高い会社がある。著者は、在職時の経験から、アメリカン、デルタ、USエア、コンチネンタルは事故が多くお勧めしないと書いている。

そうするとどこが残るか。1995年から1997年までの統計では、10万回当たり事故率は、少ないほうから、1位、サウスウエスト、2位、アメリカ・ウエスト、3位、ユナイテッドとなっている。私の場合は、サンフランシスコとシカゴ基点の出張が多かったから、現実的な選択としてユナイテッドばかり使ってたが、まあ、安全なほうだと知って一安心。


それでは、アメリカ国内の話を離れて、世界的にはどうかと言うと、本の中では色々問題が指摘されているものの、実は、アメリカの安全審査基準は大変に厳しく、全体としてそんなに悪いわけではない。

カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、日本。このへんの航空会社は、トータルの事故率の低さではアメリカをしのいでいるが、西ヨーロッパ各国になるとアメリカとチョボチョボ。で、それ以外の世界の航空会社は、はっきり言って使うべきレベルでは無い、という結構当たり前の結論になる。

まあ、確かに事故率を見る限り、南アメリカ、アフリカ、東欧、ロシア、中国本土、東南・北アジアの航空会社を使うのは避けたほうがいいだろうなあ。やはり航空機輸送というのは、実に金のかかる事業であって、経済の先進国でないと安全を確保する投資が十分に出来ないというのは事実だろう。この本にも書いてあるが、日本近辺の航空会社としては、特に大韓航空は危険だ。いくらチケットが安くても、万一の安全を考えると使うのは止めたほうがいいと思うなあ。

もっとも、航空機利用が与えてくれる時間的利便性を考えると、飛行機は、現代ではなくてはならない交通手段であって、事故率にしても実際には自動車事故に遭う確率のほうがずっと高い。だから、元ジャイアンツの江川卓ではないが、「飛行機は事故が怖いから乗らない」なんてのは、実はあまり頭のいい選択ではないような気がする。

チケットの値段はキャリアを選ぶ大きな要素ではあるけど、それだけではなく、きちんとした航空会社と安全な機種、より安全な路線を選び、悪天候などの時は無理せずキャンセル。まあ、安全確保の為に自分でできることはそれぐらいしかないが、やはり賢い客として、そこまでは考えて賢明な選択をするべきなんだろうなあ。