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1999/02/22 「神狩り」

昨夜は、日記巡りもほどほどに、買ってきた文庫本3冊を読了。山田正紀「神狩り」は、学生時代に最初に読んだ時は素直に面白かったが、ずいぶんな年月が経って再読すると、ちょっとアラが目立つような気もする。文章も力が入って生硬だし。とはいえ、とても懐かしい。

コンピュータ翻訳を専門とする学者の主人公が、日本の古墳から謎の古代文字を発見する。解読の過程で、その古代文字には、たった2つの論理記号しか含まれていないのに、関係代名詞が12個も入り組んで使われているところから、人類を超えた超越者の存在を感知する。

そして、その存在が時代を通じて人類にさまざまに干渉してきた事を発見して、その正体を突き止めようとするうちに、謎の組織から色々な妨害を受ける。とまあ、そんな筋書き。古代文字の文法から、人間を超えた知性の存在を証明するってのは、なかなか面白いアイデアなんだが、それだけで一本の物語を押し切るには、ちょっとインパクトが弱いような気がする。物語も唐突に投げ出されて終わってしまった印象だ。今にして読み返すと。

単行本化するにあたって継ぎ足された第3部は、火星の表面に同様の古代文字が発見されたってところで終わるわけだが、今時のエンターテインメントとして読むなら、その先の物語こそが読みたい部分のような気がする。

これでもかとばかりSFXやギミックに満ち溢れた最近のSF映画や幾多のトンデモ本の氾濫に慣れてるせいか、昔のSFを読んで物足りないような気分になるのは幸せな事か、不幸な事か。

とはいえ、この本は著者23歳の商業誌デビュー作であって、それを考慮するなら、若書きとはいえ、著者の才能を十分に示したいい作品だ。この後、山田正紀は、もっぱら冒険小説の執筆に流れて行ってしまったから、残念ながら他の作品はあんまり読んだ事がないのだが。