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1998/10/22 「ボイスレコーダー撃墜の証言〜大韓航空機事件15年目の真実〜」

行きと帰りの車内で、小山巌著「ボイスレコーダー撃墜の証言〜大韓航空機事件15年目の真実〜」(講談社)読了。

著者はNHK記者で、稚内局勤務の時にソビエトによる大韓航空機撃墜事件に遭遇。以前にも「消えた遺体〜大韓航空機事件の1000日」という本を書いており、これも読んだ事がある。それにしても、事件からもう15年とは。

260人以上を乗せたアンカレジ発ソウル行きの大韓航空機が、なぜか500キロも航路をはずれてソ連領に迷い込み、ソ連の迎撃機に撃墜された時には、国際社会に大きな衝撃が走ったのは今でも覚えている。

撃墜事件当時は、INSへのインプットミス説、機首方位設定(ヘディングモード)を解除してなかった説などに加えて、この飛行がアメリカのスパイ飛行だったとか、新兵器の実験に巻き込まれた、などの陰謀説が乱れ飛んだが、ソ連邦の崩壊による米ソ雪解けによって、当時、秘密裏にソ連が回収して秘匿していたブラックボックスが、ICAO(国際民間航空機関)に引き渡されており、すでに原因は解明されている。

この本は、そのブラックボックスを分析して最終的に作成されたICAOの事故報告書をもとに、大韓航空機撃墜事件の最終原因を明らかにしたもの。


アンカレジ以前からの飛行を記録したフライトレコーダーと、撃墜30分前から残っているボイス・レコーダーの分析では、大韓航空機は、アンカレジを出発3分後から一貫して機首を地磁気方位245度に向けており、それは撃墜直前まで変わっていない。INS(自動操縦装置)は動作した形跡がない。しかも記録された操縦士達の会話はあくびを交えた、のんきなもので、正規航路を500キロも逸脱して、ソ連領に入っている事など、まったく気づいた気配が無かった。

機首方位設定機能(ヘデイングモード)と言うのは、設定すると、自動的に同じ方角にただただ飛び続ける機能で、離陸後に最初のビーコンまで到達する際などに使用されるものだが、大韓航空機のパイロット達は、離陸後にこのモードの解除を忘れた。そして、途中のチェックポイントを入力したINS(自動飛行装置)が働いているものと信じ込んで、のんきに何のチェックもやっていなかったのが真相のようだ。


INS(自動操縦)モードが動作しているのか、ヘディングモードが動作しているのかの表示は、計器盤上では大変に小さく表示され、ヒューマンエラーを起こしやすい事は、事件直後の柳田邦男の著書でも指摘されていた事で、実際、この計器は後に改良されている。

しかし、いつまでも同じ245度を示し続ける方位盤や、あきらかにおかしいその他の計器の表示に、一度も気がつかずに5時間も飛行を続けていた事は、専門家によると信じられない失態で、別に死者を鞭打つ訳ではないが、、この大韓航空のパイロット達が何百という命を預かって飛行する資格のないボンクラ揃いだったことを示している。

しかも、大韓航空は、その前の1978年にも、同じくロシア領に侵犯して、迎撃機からの銃撃をうけて乗客の何名かが死亡し、ソ連領内に強制着陸させられたという事件(ムルマンスク事件)を起こしているんですなあ。

着陸後に、「いったいお前らは何をやってたんだ」とパイロットに詰め寄った乗客に対し、副操縦士(あるいは航空機関士だったか)が、「ごめんなさい、ポーカーをやっていました」と答えたと言う噂もある。後に大韓航空側はこの事を否定しているようだが、やはりそういう体質の航空会社なんじゃないだろうか。だいたい2度もソ連に領空侵犯して事件になるところが、まったく学習能力が無いといわれてもしかたない。

勿論、民間機を何の警告も無しにサハリン沖で撃墜したソ連の責任は強く非難されるべきだが、この事件でも、大韓航空側は裁判では一切自社の重過失を認めず、日本の交通事故の死亡保険金より格段に安い賠償金しか払っていないそうだ。まあ、命が惜しかったら、大韓航空には乗るべきじゃないと言う事です。