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1998/08/30 「人類の隠された起源」

のんびり起きると、外は、やはり雨。朝食の後、「人類の隠された起源」を読み進める。ハンコック氏絶賛なんて書いてるから、どうもうさんくさいと思っていたが、著者のクレモとトンプソンは、国際クリシュナ意識協会の会員で、インドの宗教文献「ヴェーダ」に書かれている、「人類は非常に古くから存在する」と言う説を証明する為に色々と研究しているらしい。どうも帯からして「トンデモ」の匂いがすると思ったが、やはりなあ。

著者達の主張によれば、現世人類は、10万年前のクルマニヨン人に始まるのでは無く、はるか太古から存在しており、猿人達と共存していた、と言うのだが。

主張は極端だが、論証の仕方は、一見するところなかなか丹念で、要するに道具を持った人間が存在するはずのない地層から、切り込みや割った跡のある獣骨の化石や、加工の跡のある石器が世界各地で発掘されており、その地層は古くは5000万年前にもさかのぼる可能性がある。これが、現世人類が何千万年も前から存在してきた証拠なんだと言う。

まあ、中には、3億5千年前の三葉虫の化石に人間の靴の踏み跡がついていた、と言う有名なヨタ話までついでに出てくるが、大半は世界各国の発掘記録から丹念に拾い起こしたものだ。まあ、地質学や人類学の専門家からは、「単なるたわごと」として片づけられてしまっているようだけど。

沢山の図版が載っているが、専門家でも何でもないので、石器か、普通の石かどうかなんてのは、判別のしようがない。しかし、やはり気になるのは、彼らの呈示している発掘証拠と言うものが、19世紀後半から20世紀初頭に集中している事だ。著者達の主張では、それ以降は、従来説に固執する考古学者達が証拠の隠滅を図っているからだと言う。(ま、これは、典型的な「トンデモ系」の言い訳なんだけどなあ)

しかし、世界各国の地層のはっきりした年代同定の研究が進んできたのは、結構最近だと聞いた事があるから、やはり今世紀初頭なんかに数千万年前の地層から発掘されたと言っても、その時点での地層の年代確定が誤っていた可能性は捨て切れない。もうひとつは、人間が骨を割った跡か、自然に破損したものかの判別や、石器か、自然に剥離した石なのかの判定も困難だと言う点だ。ま、「トンデモ本」の奇想天外な味わいには欠けるが、なかなか興味深い本ではあった。