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2006/11/17 「太陽からの風」

Amazonから届いた「太陽からの風」読了。最初に読んだのは、大学の頃だったか。A.C.クラークの短編集。今読むと実に懐かしい。表題作の「太陽からの風」は、太陽風を受け宇宙空間を静かに動く宇宙ヨットという、実に美しい光景が広がる作品。レースを諦めた主人公が廃棄したヨットが、外宇宙へと静かに加速を続けて行く結末が印象的。

「輝くもの」はクラークの好きな海洋物。深海に潜む知的生物の謎。クラークは何十年も前にスリランカの海辺に移住し、ダイビング三昧の毎日だと聞いたことがあるが、まだ健在で作品執筆中とか。海の傍で暮らす生活には憧れるな。

「大渦巻II」は、エドガー・アラン・ポーの「大渦巻」に対するSF的オマージュ。月面上の電磁カタパルトから射出された貨物船。しかし打ち上げ時に一瞬の停電が起き、貨物船は脱出速度に達せず、月を周回しながら楕円軌道を取って次第に月面へとゆっくり落下してゆく。たった一人の乗客を助けるための方策。宇宙服を着てたった一人で真っ暗な宇宙空間に浮かび、恐ろしい勢いで月面に近づいてゆくシーンを映像として思い浮かべると、ポーの「大渦巻」のサスペンスが鮮やかに蘇ってくる。

「メデューサとの出会い」も印象的な短編。木星の水素の大気に浮かぶのは「熱水素気球」しかないというアイディアが秀逸。地球の何十倍ものスケールを持つ惑星の、人間が誰も見たことがない大気中に浮かぶ観測気球。壮大なイメージの中で描かれる未知の生物との邂逅。

これらの短編が執筆されたのが1960年代というのが驚き。「幼年期の終わり」や「2001年」などの長編もそうだが、この短編集の背景になっているのは、人間性と未来への明るい信頼に満ちたクラーク・ワールド。実に懐かしい読後感がまた心地よかった。

アメリカでは、明日、土曜深夜に、Leonid Meteor Shower が観測できるかもしれないとか。日本語で言うなら、「獅子座流星群」。