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2006/09/18 トルーマン・カポーティ 「冷血」

「冷血」(トルーマン・カポーティ/新潮文庫)を出張中に読了。有名な本であるが、読んだのは今回が初めて。なんでも今回カポーティの生涯が映画化され、それに合わせての新訳発表らしい。

1959年のアメリカ、カンザス州西部の田舎村で起こった一家4名の惨殺事件。その犯人たちは結局逮捕され絞首刑にされるのだが、この事件の顛末をカポーティが徹底的に取材し、ノンフィクションとしてまとめた一冊。巻末解説によると「ニュージャーナリズム」の源流ともされる作品なのだそうだ。

二人組みの犯人の一人、ペりー・スミスは、強盗に入った家で、射殺前の被害者を床に横たえる時に敷物を引いたり、枕を当ててやり、縛ってベッドに横たえた後で毛布をかけてやったりしている。そして相棒が、被害者の16歳の娘を強姦しようとした時には、「俺を殺してからやれ」とそれを止める。このような奇妙な同情を見せながらも、一家全員をあっけなくショットガンで撃ち殺したのは彼なのである。淡々と取材した事実を積み上げて描く事件の真相は、混乱し矛盾にも満ちているのだが、真実しか持ち得ない重厚な重みに満ちている。

インディアン混血の小柄な男。悲惨な生い立ちで極貧の中を育ち、若い頃からモラルは欠如。犯罪性向がありつつも、ギターを弾き、空を眺めるのが好きだった、このペりーというアンビバレンツな人格の持ち主に、著者であるカポーティがかなりの感情移入をしているのは明らかなように思える。この本に描かれた当時、50年前のアメリカは、通う教会が違うだけで、娘のボーイフレンドに「彼とは結婚できないから距離を置きなさい」と父が忠告するような古き因習の国。

カポーティは同性愛者であったというが、この本を仕上げた後20年間、結局、1冊も本を完成させないまま、薬物中毒とアルコール中毒で急死している。「冷血」の犯人達同様、カポーティも、当時のアメリカのどこにも居場所がなかったのだ、きっと。