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2006/02/26 「善と悪〜犯罪心理分析の父、その凄絶なる冒険」

「善と悪〜犯罪心理分析の父、その凄絶なる冒険」(ロジャー・L・デピュー/PHP)読了。

「羊たちの沈黙」でも有名になった犯罪心理分析・プロファイリングだが、著者はFBI行動科学課の元チーフで幾多のプロファイラーを育てた人物。原作小説にも多くの影響を与えたのだという。犯罪心理分析というと、心理学を勉強した学者タイプを思い浮かべるが、著者は元海兵隊の猛者で現場の警官からスタートし、大学を卒業し、FBIに職を得たという叩き上げの人物。

プロファイリングの実際については他にも多くの本が出版されているが、この本はプロファイリングそのものを扱うより著者の自伝的要素が濃いもの。アメリカで司法執行官としてのキャリアがどのように積みあがってゆくのかが伺えるのが興味深い。

アメリカの異常犯罪事件、連続殺人事件というのは、他の国に比較してその異常性、殺人件数において飛びぬけている印象がある。この本ではその背景にまで踏み込んではいないのだが、その原因を考えるなら、「ボウリング・フォー・コロンバイン」や、そのネタ本になった「アメリカは恐怖に踊る」などに我々は戻ってゆくことになるだろう。

この本に掲載されている成功したプロファイリングの実例としては、ペンシルバニア州のファストフードレストラン事務室で起こったテリ・ブルックス殺人事件が印象的。警察の当初捜査では、単なる強盗事件として迷宮入り。しかし、FBIを引退後の著者が開業したプロファイリング・コンサルタント会社は、殺害方法と現場の分析から、犯人には怨恨があったに違いないと結論し、当時の婚約者が犯人だと指摘する。新任の警察署長の下で再捜査が行われ、現場遺留品のDNA鑑定から、プロファイリングの結論通り、元婚約者が逮捕され犯行を自供する。事件発生から10年以上経った解決であったという。判決確定後、被害者の親族から警察に届いた感謝の手紙には、親族全員の署名がされ、そして最後に被害者の名前も付け加えられていた。

翻訳については、ところどころ不審な部分あり。原文対照したわけではないが、日本語だけで意味の取り難い文章というのはたいてい誤訳・悪訳なのである。翻訳者後書き読むとずいぶん力を入れたようなのだが、下請け作業者がお粗末だったか、翻訳者の日本語の実力に問題あるのか。