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2006/02/23 「だから、アメリカの牛肉は危ない!」

春はもうすぐそこと思ったら、花粉もすでに飛んでるようだ。喉と鼻の調子悪いのはそのせいだろうか。一昨年までは大丈夫だったんだがなあ。

米国で、433億円という史上最高額の宝くじ当選。今までの例を見ても、アメリカの宝くじで天文学的な金額が当たるのは、だいたいにおいて金には縁の無い人が多い。ニュースによると、今回の当たりを引いたのはネブラスカ州の食肉処理工場で働く8人組だったらしい。男性のうち2人はベトナム人、1人はアフリカからの移民だったとか。

このニュースで、先日読んだ「だから、アメリカの牛肉は危ない!──北米精肉産業、恐怖の実態」(ドナルド・スタル他/河出書房新社)を思い出した。アメリカの食肉産業の実態を描いたルポルタージュだが、屠殺場で働いているのは賃金の安いベトナム人や中南米出身の移民ばかりなのだそうだ。

BSE関連の本には興味があって今まで何冊も読んだし、その関連で買った本なのだが、読んだ感想では、この邦題は狂牛病騒動を意識してちょっと扇情的。米国産牛肉の安全性について、それほど詳しく書かれているわけではない。原題は「Slaughterhouse Blues(屠畜場ブルース)」で、むしろアメリカの食肉産業の現場とそこで働く労働者の環境について取材した本。

これを読むと、アメリカ精肉産業の職場が、移民労働者を安価な労働力として搾取する過酷なものであることがよく分かる。大都市化の進展に伴い、環境汚染を引き起こすまでの大規模になった家畜生産。そしてそれを食肉にする屠畜作業も巨大化し、まさしく工業と呼ぶ規模に。アメリカには、1時間に400頭の牛を処理する「工場」すらある。巨大化した食肉処理業者が市場を寡占し、その所有する「スローターハウス」では、劣悪な環境の元、効率だけが重視され、賃金の安い移民を使い、次々と生きて動く生物を食肉という商品に変えてゆく。

先般、特定危険部位である脊柱の入ったミートパックがアメリカから到着して日本は大騒ぎになったが、この本を読むに、アメリカの屠畜場で汚れ仕事をしてるのは英語を解しない移民ばかりである。日本向けの肉だけ特別なスペックで処理しろという指示が、果たして徹底しているものかどうか。どう考えても実に疑問である。