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2006/01/06 「文明崩壊〜滅亡と存続の命運を分けるもの」〜地球がイースター島にならないために

本日も休肝日で飲まずに帰宅。しかし寒いな。

正月休みに、「文明崩壊〜滅亡と存続の命運を分けるもの」(ジャレド・ダイアモンド/草思社) 読了。

都市、部族、国、島、大陸。スケールの違いはあるが、様々な文明が滅んだ、あるいは衰退した理由、逆に崩壊をまぬがれた原因を探り、そこに地球の未来に向けての知恵を見出そうとする探求。マヤ文明、イースター島、グリーンランド、ニューギニア高地、ドミニカ、ハイチ、ルワンダ、オーストラリア。科学と歴史の知見を自在に活用して、その分析は時を遡って自在に地球を駆け巡る。

巨大なモアイ像が林立するイースター島には、現在木は1本も生えておらず人口も少ない過疎の島。しかし、土壌に堆積した過去の地層に含まれる花粉などの丹念な分析により、何百年か前までは巨大なヤシの樹が茂る熱帯雨林の島であり、豊かな島であったことが判明しているのだという。木が切り倒され土壌は流出し、土地は収奪されて痩せ、カヌーを作る材料も無くなり、イースター島の文明は他のポリネシア社会からも隔絶し、内乱を繰り返して崩壊した。島に残った最後のヤシの木を切る男はどんな感想を持っただろうという文中の問い。それは、まさに、「ソイレント・グリーン」にでてきた「地球最後の樹」のエピソードを思わせる。

収奪されつつある大陸、オーストラリアの章も印象的。巨大なユーカリの巨木を含む森林を見た初期の入植者は、オーストラリアを肥沃な大地だと考えた。しかしこの大陸は、生成が非常に古く、火山の噴火や海底の隆起などがほとんどなかったため、大地の栄養分が流出し、全体に非常に土地が痩せているのだという。森林を切り倒し、地面の草を家畜が食べつくした後、牧畜業者はこの大陸では木や草の生成が遅く、使い尽くした土地は放棄して更に奥地に家畜を移動させなければならないことに気付いた。そして異常繁殖した外来生物や植物が更に荒らしてゆく大地。痩せた土地からは河川から海への栄養分流出も大変に少なく、海洋資源も痩せている。オーストラリアの近海漁業資源は、いったん獲りすぎると回復不能なほどの打撃を受けているのだという。このへんもまったく初めて聞く話で大変に面白い。

カリブに浮かぶ同じ島の西と東の国にもかかわらず、禿山だらけで自然が破壊されたハイチとまだ緑が残るドミニカの違いを生んだもの。そしてルワンダの大量虐殺と難民の群れ。政治や地政学的な観点からみた文明の興亡も実に興味深い。

上下巻に分かれた厚い本であり、単純に感想をまとめるのは難しいが、複合的視点から語ったユニークな文明論。単なる環境保護論にとどまらない深みのある警鐘を感じる。そう、地球が壮大なイースター島にならないためにはどうすればよいか。