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2005/12/02 「間違いだらけのアトピー治療」

「間違いだらけのアトピー治療」(竹原和彦/新潮新書)読了。

私自身はアトピーとは無縁なのだが、悩んでいる人の話はよく見聞きする。「間違いだらけの〜」という題名は、ありきたりだが、つい読みたくなる。この本の著者は金沢大学医学部皮膚科の教授。アトピーを巡る盲説を排し、自らの臨床体験に基づいて、正しい治療を普通に行なえばアトピーは100%完治すると説く。

「アトピーになると治らない」、「悪性のアトピーには薬が利かない」、「ステロイド剤は一度使うとだんだん強いのを使用しないと効き目がなくなり、最後は大変なことになる」。どれも、アトピー性皮膚炎に関してよく聞く話ではあるが、著者はこれらすべてを誤解や偏見であり、根拠ない盲説であると断ずる。

アトピーを、「現代文明のひずみが生んだ業病」のように語るのは間違いで、昔からある平凡な病気。そもそも大人になれば治癒するというのが当時からの常識。ステロイド剤についても、患部に合った濃度を正しく使えば悪い作用はない。ステロイド剤が効かなかった症例は今まで一例もないし、正しい治療を行なって快癒しなかった症例も経験したことがない。著者はそう述べる。現役の大学皮膚科教授として豊富な臨床経験を持った専門家だけに、説明には説得力あり。

明らかにアトピー性皮膚炎の子供を抱えて、「先生、この子はアトピーじゃありませんよね?」とすがるように聞く母親がいるのだという。アトピーに関して過大な恐ろしさが世間に広まっているのは、アトピー治療を商売にする業者がいるからではないか。怪しげな民間療法に対する反論も興味深い。「アトピーのために生きる」生活ではなく、アトピーをごく普通の皮膚病としてとらえ、ごく普通に治療する生活へ。魔法の薬は無いが、正しく対処すれば治療できる。考えようによっては当たり前のことが書かれているのだが、傾聴に値する 意見のように思える。